魅力はシュールなコメ作りだけではない”和”RPG『天穂のサクナヒメ』感想

キャラデザが大好きな村山竜大先生なので購入。
買った当初はマーベラスのゲームだと思ってたけど、実際はほぼ2人+村山先生で作ったゲームらしい。そんなわけでRPGにはあまり期待せず、飽きずに全部やれたらいいなくらいの期待値だったんだけど、このゲームは予想を遥かに超えた完成度の高い神ゲーだった。
ネタバレなるべく無し

 

 

1.コメ作りが面白い
このゲームを作る上で最初にコメ作りから始めたという執念のコメ作りパート。
畑を耕して肥料を作って田植えをして雑草を取りながら中干しして収穫して干して精米して…と1年間を10分~15分で体験できる。面倒でもないしシンプルすぎることもない絶妙なバランスだと感じた。
この米作りの出来次第で主人公のサクナのステータスが育っていく。つまりRPGでいう”レベリング”の部分を担っている。まあでもよほどふざけない限り1年で25くらいずつしか上がらないので気楽にやっていいと思う。
便利な合鴨農法や道具はストーリーの進捗によって解放されていくので、1年目や2年目の品質はこだわるだけ無駄。一番面白い1年目~2年目が窮屈で、惰性になっていく終盤で開放されるのはちょっともったいないかもしれない。
作ったコメはちゃんと評価されて神様の間で流行ったり、大変な分そういうちょっとした評判が嬉しかったりほっこりしたりする。
コメ作りでステータスが上がるのも、主人公が豊潤の神であるという設定が活きていて見事。
昨晩食ったもの次第で下肥の性能が変わるとか、少しの水の入れ方で成長度が変わってくるだとか、農業の大変さを伝えるための凝り方がハンパじゃない。
米作りへのリスペクトを大いに感じた。

 

2.アクションRPGはそこそこ面白い
結局のところ年数を重ねてステータスを上げないとクリア自体無理なので、あまり根を詰めずに必要な肥料や食料だけ確保したら、数年をコメ作りだけ集中して、上げたステータスでアクションパートをサクサク攻略するのが効率的には良いと思う。
ただ決して面白くないわけではなく、敵の攻撃に合わせて一瞬前入れすると弾き(ブロッキング)ができたり、ジャンプキャンセルが効く必殺技が多く羽衣を合わせたコンボ構築が楽しかったり、自分は一切飽きずにこのゲームを終えれた。単調なゲーム大嫌いな自分でもこれなので相当面白い部類だと思う。
ただし、連続攻撃中は向きの切り替えができなかったり、罠系のオブジェクトの判定がデカすぎて普通に飛び越えるのも一苦労だったり、終盤はかなり長いダンジョンにも関わらず終盤で死ぬと容赦なく最初から(取得物の進捗も消える)だったりシビアな点も多いので、稼いでから無理せずやらないと自分みたいに余計なストレスを貯めるだけかもしれない。そういう厳しさが好きな人はギリギリの年数でクリアするのも面白いと思う。終盤覚える登鯉などの技がぶっ壊れてるのであんまりこだわってやる必要はないと思う。
序盤強かった荒田起こし(動作中ダメージ85%カット+ジャンプキャンセル可能の渋い技)がヒット数が増えてくると判定が消えて使えない技になるのだけは直してほしい。
素材がどこで取れるか逆引きできれば最高だったけどそこまで求めるのは酷かなあ。根菜ってどこで取れるんだっけってなるとマップまでいって一覧から探さなきゃいけなかったのは大変だった。

 

3.キャラクターとストーリーが超面白い!!
成り行きで家族のように稲作をする仲間たち。どれも個性豊かなのに必要最低限なつくりになっていて、キャラクターを活かしたうえでコンパクトにまとまった凄く良いストーリーでした。
村山先生のキャラデがどのキャラも抜群にかわいくて、特に人外系のかわいさは流石だなあ...と思っていたら敵には禍々しくかっこいいのも居たりプロってすげえなあ…

サクナの声が桐葉さん(つぐもも)やサターニャ(ガヴドロ)で性格はその中間あたり。(終盤は)頼れるダラけたい系のじゃロリでめちゃくちゃ好みだった。あと演技がめちゃくちゃうまいのでシナリオに厚みが出ている。ここにこだわったのは天才だね~。

グラフィックもかわいらしくてぬるぬる動くし、イベントシーンでは寝転がったり飛び跳ねたりと表情豊かなのも凄い。ゲームエンジン自作らしいけどマジか?化け物か?

大神とか好きな人はたぶん好きな話。労働したぶんちゃんと恩返しが来るという心温まる話なのに説教臭さがなく、盛り上げ方が上手すぎて最後はめちゃくちゃ泣いちゃった。労働最高!という話にはならずに、成り行きでやってた農業と向き合っていくというゆるい方向性が好み。
とにかく終盤にかけての盛り上がりは尋常じゃなかったのでストーリーだけでも絶対にお勧めできる作品。

サブキャラだとアドバイス役のタマ爺と親友のココロワが好きだった。
ストーリーのちょうどだれそうなタイミングでこいつらの話が挿入されて、それで先が気になって進めていくとまた違う方面で展開されて行ってという感じで息もつかせぬ面白さだった。
サクナの「ブッハッハッハ」とココロワの「ブヒュッフヒヒ」みたいなどっちも汚い笑い方なのが好き。二人で子供作ってほしい。

 

4.まとめ
プレイ時間は25時間。インディーズゲームではなかなかのボリュームだけど、ずっと楽しい25時間だった。インディーのRPGってだいたい途中で飽きが来たり稼ぎが面倒だったりするんで凄いと思います。

 

丁寧に丁寧に作られたゲームで、これをインディーズで作成したというのは凄く勇気をもらいました。自分も頑張ります。
今バズっていろんな人が遊んでくれてるけど、バズで終わるような一発ネタではない深みのある良いゲームだったのでちゃんとそういう評価になってほしいなと願っています。

このゲームメシがいちいちうまそうでお腹空くのでダイエット中の人は覚悟してやったほうがいいですよ(夜ラーメン2敗、昼焼肉1敗)