独りで静かで豊かなADVゲームNight In the Woods感想

 

 

とりあえず一周遊んだけどもうめちゃくちゃ面白かった。最近だとガレリアの次くらいに良かった。
この良かったはゲーム的に優れているという意味ではなく、個人の感傷にドストライクだったという意味で、万人に勧められるかというとかなり怪しい。ゲーミングリストカットとでもいうべきこのゲームは、猫が好きで、コデインが好きで、キズのある友人との時間が好きで、イリーガルなことがちょっとだけ好きで、友達と狭くて暗いお店でピザを食べるのが好きな人にお勧めしたいゲーム。
Steamの感想で”夜中にツイッターをしているようなゲーム”という表現があり、優れているし最高だなと思いました。

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主人公は大学を中退して実家に戻ってきたニートのメイちゃん。
女の子だけどバンドでベースを弾いていたり、口が悪かったり男の子みたいな性格でかわいい。そんなメイちゃんは闇をたっぷりと抱えてるのに友達思いで家族思い。町の人とも気さくに会話したり詩に耳を傾けたりどちらかというと良いヤツ。
自分ではどうしようもない問題を薄めるように生活していくメイちゃんは、問題を抱えながら終わっとる田舎町で大事な大事な友人と1週間を過ごしていく。そんな中で死体の腕を発見したり、拉致現場を目撃したりしてしまい、それを相談するんだけどコデイン中毒者のメイちゃんの話は誰も信じてくれない。
次第に悪くなる状況とそれに伴う視覚的効果が見事と言うしかない最高の演出となっていて、楽しくは無いんだけど続きが気になる本当に攻撃力の高いゲームだった。かといって鬱ゲーかといわれるとそうではない。ちゃんと前向きなエンディングに向かっていく。

小粋なジョークを交えたテンポの良い会話だけでも楽しいゲームで、途中飽きが来ないようにちょくちょく挿入されるミニゲームも凄く出来が良くて没入感を高めてくれる。

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グラフィックや音楽はどれをとっても一級品で、会話が主体のADVゲームが苦手でなければ一度手に取って遊んでみて欲しいというのが本音。前述したとおり内容はかなり向き不向きがあるが(陰鬱とした内容というより、終盤の展開もかなり人を選ぶと思う)ゲーム自体の出来は最高に近い。

音楽も場面ごとに100曲以上用意されているし、ボリュームも一通りで6時間と小ぶり。3人の親しい友達のうち誰と過ごすかが選択式で、恐らくそれによってエンディングも若干違うようだ。明日からはビー以外のキャラクターのイベントも拾いに行きたいが、ゲームの仕様上それを容易に実現出来ないので、ローカルフォルダのコピー等を駆使しないと一度見たイベントを再度見るダルさはあるらしい。

ビーという姉御肌の友達が凄く好きで、初日は嫌われているような感じなんだけど、一緒にパーティ行って大失敗したり、ビーの車でゲロ吐いたりしてるうちに打ち解けていくのが心地よかった。痛みを互いに共有して自然体になっていくのは良いよね。仕事に悩むビー(親が精神障害者、貧乏、オーナー)に「辞めりゃいいじゃん」というメイ(ニート、中退、親に食わせてもらってる)の発言はペラペラすぎて最高。思慮が無さすぎたり勢いで失敗したりというところが自分と似ててつらかった。

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とんでもないグログロのゲロゲロヒューマン最悪ドラマがデフォルメされてふわふわしてる動物の皮バリアをはっていて、最高のグラフィックと最高の音楽があると面白いゲームになってしまうというのはかなり皮肉ではあるが、それはそれとして全体的にツボだった。とても楽しめた。サイコー。

余談ではあるが、開発者は2人+アシスタント1人の共同制作で、開発者は一人自殺している。完全にゲームと地続きになった重い話ではあるが、このゲームをプレイしたあとに下記の和訳を読むと納得しか出来ないのは不謹慎だが笑える。
そりゃこんな境遇でゲーム作ったらこんなゲームになるし、セリフ一つ一つに説得力があるのも頷けるというか、名実ともに”重い”ゲームというオチがついてしまった。

proxia.hateblo.jp

ゲームに制作風景とか製作者の人間性とか完全に乖離して考えたいとは思うけど、インディーズゲームは命を削って作られたようなとんでもない一品と巡り合うので辞められないんだよなあ。
イベント全回収してまだ気力が残ってればネタバレ版感想を書こうと思います。