映画犬王 感想

あらすじレベルでネタバレあるので見に行く予定の人は見終わってから読んでください。

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ロックバンド版バジリスクです。
えら~~~い人たちの権力争い、平氏と源氏があれやこれやと争ってるとき、そのしわ寄せは民草に来るわけです。戦火だけでなく、今回は”呪い”や”怪異”にスポットライトがあたります。草薙剣は抜刀した父を一刀両断し、主人公の目から光を奪った。能楽で天下を取ろうとするおじさんは失われていく才能やライバル家の台頭によって狂気に飲まれ、その果てとして右手は身長の3倍、目は顎と額にあり、背中は鱗に包まれた奇形児・犬王を授かる。しかし、皮肉にも父親の才能を受け継いだのは犬王だった。

盲目の琵琶法師と奇形のダンサーは出会い、そして音楽的意見が完全一致しユニットとなり、ライブをやって一世を風味し、そしてお偉いさんの勝手な都合によって解散させられる。という大変わかりやすいお話でした。

四畳半とか見たときは「あ~サブカルって感じ」というちょっと薄ら寒いような感情もありつつ、新しい映像表現に触れられた喜びは確かにあったので”まあ良かった”くらいの感想だったが、犬王は完ぺきに”面白かった”という感想である。
とにかく映像表現が抜群に良くお話が面白い。90分のアニメ映画としてここまで完結に褒められる作品はなかなか無いと思うほどよかった。民衆受けする新しい形の能楽としてロックフェスを模すのも、レーザーやスモークやワイヤーアクションをこの時代でやろうとしたらこうなるんだねえというシーンも面白かったし、エレキギターの音が出る謎の弦楽器もよかった。音モノのアニメなのに演奏やダンスが曲とあってねえじゃん、いくらなんでも映像の使いまわしが多すぎんだろ。とか個人的に許容できないポイントもあるにはあったが、まあその他が抜群に良かった。
めでたしめでたしで終わってもいい切り取られ方なのに、しっかりと権力に刈り取られてバッドエンドを迎えるのは野外フェスが終わり帰路で次の日の仕事について考えているときと同じ気分にさせられたのであそこまで含めての体験なんだろう。谷一兄者が死んだときに一度冷静になってほしい自分と、芸術家はそんなことで冷めたりしねえだろという自分が居て、嬉しいのか悲しいのかなんとも言えない気分で映画は終わった。

映画館のデカいスクリーンで爆音で見るのをおすすめします。