イハナシの魔女 感想

 

最高でした。クリア後丸一日経過しましたがまだ余韻があります。この読後感の良さはVA-11 Hall-Aに近いです。
今年も素晴らしいADVを一本遊べて幸せな体験でした。

15時間ほどでクリア

純粋なADVって久々に遊びました。NITWのようなミニゲームをはさんだり歩き回ったりすることのない、ただ読むだけのADVです。

フェリーが一日1往復しか走らない沖縄の離島を舞台にした甘酸っぱいボーイミーツガール作品で、タイトルにもある通りキーワードは『魔女』です。どんな困難でも魔法でたちどころに解決してしまう謎の少女リルゥと、継母に虐げられながら育った主人公の光がどう結ばれ、幸せになっていくかの物語でした。

主要キャラは「主人公」「ヒロイン」「妹キャラのような地元の友達」「その友達」「お姉さん」「男友達」という最小限キャラクター構成でありながら、全てのキャラクターに見せ場と必要性があるという見事すぎる脚本にただただ脱帽してしまいました。
こんなんを書いてみたい。

3部構成になっており、1部は多少の困難はありながら終始明るく進行していくのですが、2部終盤から「えっこんな重い話なの」と驚くほど深刻な状態に発展していきます。しっかりとハッピーエンドに収束しますが、本当にこれ無理で悲しい終わり方するんじゃないのという絶望感が常にありました。そういうの苦手な人は気を付けてほしいですが、全体的にギャグもストーリーも異常なテンポ感で進んでいくので、まどろっこしい時間はほとんどありません。

毎年沖縄旅行行くくらい沖縄好きなので、南国の田舎で謎の少女と2人暮らしというとんでもなく素敵なシチュエーションに幸せを頂く毎日でした。あまりにも見事に簡潔な終わり方をするので、DLCで後日談等販売してくれることを祈るばかりです。アニメ化も夢じゃない。

現状かなり知名度が無く、かなり勿体ない状態なので是非一度上部リンクからストアページに飛んでみてください。

以下ネタバレ注意

 

 

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とにかくキャラに無駄がない。ヒロインのリルゥが儚く健気で可愛く、妹キャラのアカリちゃんは序章こそ楽しくて明るい頑張り屋さんキャラだが、終盤の超激重フェイズになると心の拠り所のようなキャラになる。おっとりお姉さんの比嘉さんも周りには分からないところで支えてくれていて、怪力の伏線をこれ以上ない形で回収。金髪縦ロングはアカリを支えている存在でありながら島という牢獄に説得力を与えるためのキャラなのかな。あんなちびっ子があそこまで背伸びしなきゃいけないような歪な環境だったと。
ツーブロは主人公を殴れる存在として居なきゃいけなかった。
とにかく無駄がない登場人物にただただ脱帽。

アカリちゃん編くらいの重さ(島というしがらみ、しきたりという枷)なのかと思いきや、比嘉編の重さでびっくらこいた。そしてイチャつくだけだと思っていたリルゥ編がぶっちきりで辛い。目を背けたくなるような辛さ。特に光が破滅に向かって身を粉にしていくのをリルゥ自身も止められないのが本当に辛かった。
そしてとにかくその辺の描写が丁寧すぎるほど丁寧で、光のヘタレ病ですらしんどかったのに急に光過敏の話が始まってそこからラスト前まで一生辛いので心の準備が出来てねえよと言う感じでたいそう揺さぶられた。
最後の一時間で全部回収して全部ハッピーにする勢いの良さが本当に好みで、細かいことはどうでもいいんだよというおおらかさもありながら、その辺の大雑把さを沢山用意してきた伏線回収でカバーしているのが凄いと思った。

沖縄という自然や聖地がたくさんある場所、景色を活かしている反面、理由はあるにしろ余所者を排除しようとして権力に逆らわない田舎のカスさみたいな民衆の描き方はうーんどうなんでしょう。そんなに沖縄のおじいおばあは悪い人ばかりではないと思いますがね。警察を暴力装置として殺すシーンもちょっと唐突だなとは思いました。
いやほんとこのへんは辛かった。どんどん光とリルゥが追い詰められていって、もう勘弁してあげてくださいって感じ。

エンディング後の幸せないつものメンバーも良かったし、その後のツーショットも良かった。何より後ろのカレンダーはかわいいかわいいアカリちゃんなのでは?そういうサブキャラの頑張りが報われているような描写が大好きなので本当に良かった。幸せでした。

EXで敵が何故10日で昼を解放したのかその理由もわかり、外伝という形で深堀された伏線回収が本当に見事。あえて本編でこれをやらない勇気は凄いものだったろうなと感じる。伝記ものでも十分面白いものができたと思うが、ボーイミーツガールな熱い作品として世に出てきて良かった思う。

この作品がたくさんの人に遊ばれる事を祈ります。とても面白い作品でした。