アステカの神々は怒っている テスカトリポカ感想

f:id:negisenseikamo:20211120114044j:plain

ヨドバシ.com - テスカトリポカ [単行本] 通販【全品無料配達】 https://www.yodobashi.com/product/100000009003375357/ #ヨドバシドットコム

 

煙を吐く鏡を意味するそのアステカ神話の一柱は、どこにでもいるし、どこにもいない。テスカトリポカの依り代に選ばれた生贄は、一年かけて豪勢な食事、暮らし、4人の妻をもらうことでテスカトリポカをその身に宿し、祭りの日にテスカトリポカは煙を吐く鏡、どこにでもいるし、どこにもいない状態に戻るために器は心臓を抉り出される。
アステカの信仰が失われた今、神々は生贄が捧げられない事に怒り、麻薬戦争という形でこの世に君臨することで人間に罰を与えている。今日はどんな人間をコカインやアンフェタミン<イエロ>でぶっ壊し、麻薬密売人と警察と市民を何人殺すのだろうか。

 

そんな話ですテスカトリポカ。ジャンルはクライムノベルのような形を取っていますが、アステカ神話信仰に狂うカルテルのボスやコカイン狂いの腕の良い元医者、麻薬中毒者の息子など麻薬に狂わされた人達がなんやかんやあって日本に集結して大暴れするという話です。なんでそんな事がと思うかもしれませんが、全てはアステカの神々の思し召しなのです。

スリリングかつ知的好奇心をくすぐられるアステカ信仰を織り交ぜた暴力は最高で、かなりボリュームのある作品ではありますが夢中で読めてしまいました。キリスト教からしたら間違いなくカルト、邪教の部類を心の底から信仰している人の話というのは、どこかで破綻しているという偏見がありましたが、この作品に登場する人たちにはそういった矛盾は無く、ただ神が求めるから(敵の麻薬組織の)心臓を抉り出すという説得力があります。

登場人物は主役であるバルミロとコシモ以外ほぼ全員が麻薬中毒者(といっても、あへあへ~な書き方ではなく、コカインキマってるから異常な集中力でチート能力を得ている~という書き方で説教臭さはないです)なので、語りの文章はどこかで破綻していて矛盾があるのですが、漫画とか読んでいてもどこかでネジが外れたキャラが好きなので全員好きでした。全員ヤバいやつ。

多少冗長さはありましたが、好みにドンピシャだったのでずっと楽しい一冊でした。おすすめです。