OneShot: World Machine Edition ネタバレなし感想

「はじめまして、神様」

ニコ、はじめましてではないんだよ。

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Oneshotのコンシューマーリメイク版が出ると聞いて、心臓が高鳴った。
長い人生のオールタイムベスト。5年前にプレイしてずっと変わらない一番好きなゲームのリメイク版が出ると聞いて居てもたっても居られなかった。

”メタゲー”の中でもPCゲームということを活かし尽くしたこのゲームは、日頃から使用しているPCという手綱によって容赦なく距離を詰めてくる。だからこそコンシューマー移植は絶望的であろうというのがファンの間でも定説だったと思う。しかし、昨年同じようなギミックの多いドキドキ文芸部が『仮想のOS上で動作しているドキドキ文芸部』という作りにすることでCS版が発売されていたので、oneshotも時間の問題かもというのは頭の片隅に存在した。

しかしいざ出るとなると話は別だ。同じように仮想のPC上でウインドウモード起動される"oneshot"は、原作のいいところをちゃんと再現できているのだろうか。アレはできてもコレは操作する上で障壁になりえるのではないだろうか。そもそもツクールゲームとして作成されて、リメイクされてSteamに入った関係上、実際の攻略はツクールの探索ゲーと同じようなレベルであり、いくら演出が良くても現代の人に受け入れられるのだろうか…などなど心配事は尽きなかった。しかし、正直私はここに書いたものについて心配だったから心臓が高鳴ったのではない。

oneshotは文字通り「一度きり」のゲーム。
本編終了後、あまりの衝撃に空っぽになってしまったように何も出来なくなり、1週間ほどは何をしていても主人公・ニコの事が頭に浮かんでしまうような有様だった。

クリア後にわかるある理由で、もう一度起動するのは野暮。というような感情もあるにはあるが、大満足のゲーム体験だったのにも関わらず、それから一度も起動しないまま自分の中でのオールタイムベストとして輝き続けるこのゲームを、そのまま生かし続けたいという理由が大きかったと思う。

もう一度起動して、何か不満な点が見つかるのではないか。
遊んでいる時の機嫌が良かったから過剰に評価してしまっているのではないか。
恐れるあまり、ニコにもう一度会うことは5年間叶わなかったのである。

しかし、流石にここまで好きなゲームの移植版、それも移植の関係上ではあるが大幅に作り直された状態でお出しされてそれに手を付けないというのは、移植してくださった方々に申し訳無いと思う感情が勝った。
そんなわけで、World Machine Editionをプレイするときは、他の物全ての邪魔を排除したうえで、絶対にながらにならないように遊ばせてもらった。

前述した不安は全て杞憂であった。解像度の問題で画面は小さいが、素晴らしいドット絵が織りなす荒廃した世界、どこか物悲しい音楽。そしてその中でも気丈に暮らす人々ひとりひとりのユニークなセリフ。そして、良い子で他人思いなかわいいニコ。思い出の中にあった、私が好きな"Oneshot"全てがそこにあった。
自分はこのゲームを好きで居続けて本当に良かったと思ったし、その感情が嘘ではなかったということが5年越しに気づけて憑き物が落ちるような気分で楽しむことができた。

画面の中のニコは、まるで初めての冒険であるように自分を神様と慕ってくれるのが救いであり、勝手だが寂しさを感じた。
だから私は、またニコをこの世界に呼び戻してしまった罪悪感と、またちゃんと家に送り返してあげるからねという気持ちを込めて、こう答えた。

「ニコ、はじめまして」