寿命を担保にされる地獄の神ゲー。Lobotomy CorporationをRTA in JAPANで見てしまう前に遊んで欲しい。今ならこの地獄が873円

『Lobotomy Corporation』とその続編『Library of Ruina』をクリアし半年が経過してなお、私の熱は冷めるどころか日々上昇している。なんなら、元々私の心臓は動いておらず、この2つのゲームをプレイすることでやっと動き出したのかもしれないとすら感じるほどだ。

 

ロボトミーは本当にしんどいゲーム

まず、クリアに100時間以上かかるゲームであるということは知ってほしい。この時点でプレイは無理だとあきらめる人も居ると思う。

この時代に余暇時間を100時間捻出するのが相当難しい事はわかるし、実質無理である人のほうが多いだろう。でも100時間なんとか捻りだして欲しい。会社にテレワークを提案するとか、学生なら長期休みをこのゲームに全額ベットするとかそういう感じで頼む。

どんなゲームかというと、扱いを間違えると施設ごと崩壊させるような怪物を相手に施設経営を行うシミュレーションゲーム。プレイヤーは管理人となり、適切な指示のもと社員に危険な怪物の世話をさせてエネルギーを捻出させるゲームだ。

と書くと、とても平凡で退屈なゲームのように感じるかもしれないが、このゲームの本質は「失われるリソースを元に戻すためにその日をやり直すか、それらを犠牲に次のステージへ進むか」という選択を迫られるところにある。

キャラロストのあるゲームをやったことのある人なら想像しやすいと思うが、このゲームはプレイヤーのミスで社員や装備品を失った場合にオートセーブされないので、セーブポイントまで戻すことでミスを無かったことにする事ができる。しかし、終盤はその1日を戻すこと自体が大幅なタイムロスになるため、プレイヤーは葛藤することになる。自分の寿命を削って1日をやり直し社員を生き返らせるか、それとも先へ進むか。もちろんその先はさらなる地獄が待ち受けているので、まあ大丈夫だろと進めた先に待っているのは「1日目からやり直す」という最悪の結末である。出来る限りリソースは失いたくない。ローグライクのような「死んだら最初から」とはまた違った緊張感が常にあるゲームなのが唯一無二の魅力であり、面白いところであり、最大のストレスとなるポイントだろう。

というわけで100時間ずっと面白いかと言われるとそうではない。やり直しによる苦痛を味わっている時間がかなり多いし、その繰り返しの最中も集中力が要求される。

しかし、それを乗り越えていく達成感とは全く別なところに訪れるこのゲームの面白さが存在し、『Outerwilds』や『Oneshot』のような、人生で一度きりしか味わうことができない驚きに満ち溢れているところに私は惚れ込んだ。「ググるの厳禁」系ゲームの一つの到達点だろう。だって、このタイトルでは何十回もそういう瞬間が訪れるのだから、オモシロ回数の物量という点で右に出るものはいない。ここについてはネタバレを最小限にして、次項で軽く触れる。

だからこそ、RTAでたくさんの「一度きり」を見てしまう前に、是非一度プレイしてほしい。このゲームは人生で一番好きなゲームになりうるポテンシャルがあるゲームなので、動画でそれを見てしまうのは正直勿体なさすぎる。

もちろんRiJの走者の方は頑張ってほしいし、それを見て面白そうと思い買ってくれる人がいることは間違いないので、それ自体は否定しないが、あくまでおすすめは「RiJ前にクリアし、RiJを見る」ことである。私はクリア済みなので当日楽しみます。

ちなみに、RTAのカテゴリ自体は「大きなネタバレを極力避けたもの」なので、非常に愛のあるカテゴリなのだが、仕様上このゲームのラスボスにあたる存在と、最後に味わう絶望について完璧にネタバレされてしまうため、RiJのスタッフや走者の方には非常に失礼で申し訳ないお願いな事を承知で、1ミリでもプレイするつもりのある方はなるべくプレイ後にアーカイブで見てもらうことをオススメしたい。

ロボトミーは相互理解のゲーム

ロボトミーコーポレーションというゲームと、転校初日の学校や転勤直後の職場はかなり似ていると思っている。

名前や顔、性格や好きなもの嫌いなもの。自分に多大なる恩恵をもたらしてくれる友人となる人もいれば、極力関わってはいけない人もいる。

ロボトミーではそれを疑似的に怪物との触れ合いで再現しているゲームだ。見た目がキュートでもとてつもなくヤバいやつであったり、顔は怖いけど実はイイヤツみたいな出会いと別れが何度も何度も訪れる。そういう意味でも一度きりのゲームだろう。

もし学校を卒業する日に、入学式に戻れたら?
もっともっと人間関係を上手にこなすことが出来るであろうことは想像に難くない。

ロボトミーコーポレーションでもこれを行って気難しい怪物や恩恵の大きい良い奴を知った状態で“強くてニューゲーム”することができることが大きなゲーム性になっているが、やはり1度体験した時間をもう一度体験するというのは退屈な場面も多いだろう。このゲームがずっと楽しいゲームではないというのはそういうところから来ている。

前述した寿命を担保にした気が抜けない施設管理と、怪物との相互理解。なかなか他では味わえないゲーム体験が待っている。どうしても10時間~30時間くらいがダレてくる味わいなので、気合い入れてクリアまでやったるという決意を胸に秘めて頑張ってほしい。

何度も何度も想像を裏切る楽しさと難しさが待ち構えているゲームだ。

ゲーム性と嚙み合ったストーリー、周回の果てに待ち受ける達成感を是非味わってほしい。

 

 

このゲームの更なる魅力(ネタバレなのでやろうと思っている人は見ないこと推奨)

そして極めつきに、完璧に学校生活を送り、「学校中の男と友達になる」とか、「テストで全部100点取る」ような周回プレイ者しか到達することが出来ない偉業に対して発生する隠しイベントというかボス戦が9種類用意されており、ここに至った瞬間の驚きや絶望感がこのゲーム最大の魅力である。

初見ではあまりの難易度にふざけているのかと思うレベルの無理難題をふっかけてくる。フロムゲーのようなプレイヤーの熟練度の向上を要求され、それを成し遂げた時の達成感たるや、他のゲームでは味わったことのない非常に大きいものだった。

100時間越えの大ボリューム、施設シミュレーションという不慣れなジャンル、そして恐ろしい難易度。この3つが襲い掛かってくるとてつもなくハードルの高いゲームだが、歯ごたえと極上のゲーム体験を求めている人は是非プレイしてほしい。

クリア後は『Library of Ruina』というロボトミーの続編にあたるゲームを遊ぶことができるというご褒美もある。こちらも難易度は高いが、ロボトミークリア者へのファンサービスのようなゲームなので至上の時間となるだろう。「1年の時に転向しちゃった〇〇くんが、3年の自分がピンチの時に助けてくれる」ような体験が何度も何度も襲い掛かってくるゲームで、低資金のアイディア一点突破ゲームであるロボトミーが売れまくって潤沢な資金を手に入れたインディ企業が、儲けた金をぶち込んで作ったファンサービスの純然たるパワーを感じてほしい。