のすのゲーム感想ブログ

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(戦闘以外は)最高のアドベンチャーゲーム『ペーパーマリオ オリガミキング』感想

勧められて遊んだのですが、あまりの面白さに夢中になったままクリア。
感動的で悲劇的なエンディングに大号泣してしまいました。

素晴らしいアドベンチャーゲームだったので感想を残しておきます。
ストーリーについても触れたいので、後半はネタバレがあります。ぜひクリアしてからご覧ください。


全体を通してテーマパークのアトラクション感のある「とにかく楽しい」ゲームでした。
体験型の観光施設のようで、くどくなく、どんどん使い捨てていくリッチなギミックの数々。そして秀逸なテキストとダークなギャグセンスが見事に調和しています。

「命を持ったオリガミたちが、紙でできたマリオたちの世界を侵略しようとする」という突拍子もないストーリーも、マリオというブランドとおなじみのキャラクターたちによって違和感のない楽しいものになっているのですが、その首謀者である兄のオリーを止めるために立ち上がるオリビアというキャラクターがこの上なく魅力的で、物語の根幹を担っています。

命を与えられて間もないオリビアは世間知らずの女の子のようなキャラクターで、見るものすべてに目を輝かせます。世間知らずなので役割としては「ボケ」なのですが、主人公でありプレイヤーのマリオが喋らないのでオリビアが進行役になるしかなく、基本的にボケしかいないこの世界でツッコミ不在の恐怖が展開されていきます。最高です。

素直でいい子、マリオと助け合いながら成長していくオリビアとの旅はバディ物として大満足できるストーリーで、大好きな『Oneshot』というゲームのように相棒に愛着を抱かせることにこの上なく成功していたと思います。後述しますが、ラストシーンは声を上げて号泣するほどでした。

また、自社キャラの「お約束」を使った展開や、「紙でできたキャラクター」「オリガミ」「文房具モチーフのボス」だからこそできる、非常にブラックでゴアなスプラッタホラーな展開も予想以上の悪趣味さがあり非常に好みでした。

特に「穴あけパンチ」と「ハサミ」のダンジョンでは「これよく任天堂が許したな」と思うほどのかなり過激な表現があり驚くと同時に、これがしっかりとギミックやしょうもないギャグ展開に結びついており関心してしまいます。

そもそも物語冒頭最初のシーンから“紙のキャラクターが無表情のオリガミに折られ、見境なく襲ってくる”という衝撃的な始まり方をするので、全体的に薄く不穏さが漂っています。明るさだけではないところや、どこか不穏なテイストからも『劇場版クレヨンしんちゃん』のような面白さが随所にあり、非常に好みでした。

「キマってる」「泥酔しながら作ったのか」と言いたくなるような不条理ギャグのオンパレードにもかかわらず、全体としてみれば破綻なく、非常に軽快なテンポで進んでいく脚本・シナリオの巧みさのようなものを感じる恐ろしいゲームでした。そんなシナリオは『moon』の工藤太郎先生が手掛けていると聞いてかなり腑に落ちましたね……。

“きわどい”を遥かに超えるラインの下ネタからスタート

このようにストーリーやダンジョンのギミック、「オリガミ」を使った唯一無二のビジュアルなど非常に素晴らしい体験を提供してくれる反面、戦闘の圧倒的な面白くなさも特徴的でした。

戦闘はターン式のシンプルなコマンドバトルが展開されるのですが、4×8のフィールドを回転させたり入れ替えたりして敵を並び替えるルービックキューブパズルのようになっており、これが非常にテンポが悪く難易度も(パズルはクソむずいけど、勝つだけなら)低いものではっきりいって面白くありません。パズルも「成功したらバトルが楽になる」というより「失敗したら1ターン余計にかかってしまう」という意味合いが強く、敵を倒したときにもらえるものが消耗品だけなので、言ってしまえばそもそも戦う意味が無いのです。
うっかりシンボルエンカウントした時のいやさはトップクラスで、いやすぎて逆にフィールドに緊張感が保たれるという不思議な遊びを提供したほどでした。

ただしボス戦はこの入れ替えパズルを利用したギミック戦になっており、ボスの多彩な攻撃方法や、オリビアと協力して敵を倒す楽しさなど非常に楽しいコンテンツになります。終盤はパズルに慣れてきたのもあって少し飽きが出ましたが、それでも「倒し方を試行錯誤して、試したい攻撃を選ぶ」という体験はかなり独特で面白いものだと思います。

通常戦闘が罰ゲームすぎるところだけは褒められませんが、それ以外は文句のつけようがない面白さでした。20時間ほどの究極にリッチな「アドベンチャーゲーム」を遊びたいのであれば絶対に満足できる作品です。おすすめします。




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     以下ネタバレ

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非常に衝撃的なシーンが何度も訪れるオリキンですが、「ボム平との別れ」「やりすぎスプラッタギャグ」「とんでもないビターエンドのエンディング」の3つが衝撃的でした。

そもそもボム兵なんてドカーンってコインまき散らすだけの存在ですし、ペーパーマリオでは仲間になって何度も爆発してくれたりするので、オリビアが岩の下敷きになるシーンでも、ほとんどのプレイヤーが「お前もったいつけてないでさっさと爆発しろや」と思ったことでしょう。
しかし、一つダンジョンを挟んでおふざけなしのボム平さんの過去が描かれ(導火線のくだりはギャグですが)、本当に爆発していなくなってしまう。というのは衝撃的でした。

自社キャラクターの“あるある”を使いつつ、オリビアの成長シーンを描き、そしてこの経験こそがオリビアの最後の願いの伏線になっているという何重にも凄いシーンだと思います。ここでガッチリハートを掴まれましたね。

ヤバい設定もチラつかされましたが、深堀はされなかった

スプラッタギャグをするためにブンボー軍団というボスをデザインしていないことを祈りますが、とにかく悪趣味なゴアギャグもオリガミでやるとマイルドになるんだなあという人生で一度きりの発見も正直楽しいものでした。

へしおれ!じゃないのよ

明らかに『デビルマン』とかから拝借してきてるこいつとか特に最高でしたね。

そしてもうずっと泣いていたエンディング。というか最終ダンジョンは随所にオリーがオリビアと2人で手を取り合いたかったと思われるオブジェクトが多数あったり、

悲劇でしかない自分に書かれた落書き、

(めちゃくちゃ間抜けな絵面なのに世界一アツい紙相撲も大好き)

そして最後。自分を犠牲にしてまでもマリオの願いを叶えようとするオリビアのシーンは完全にやられてしまいました。
この辺のもったいつけない演出は本当に素晴らしく、「兄さまが折ったオリガミを全部元に戻して」という願いから、その結果についてプレイヤーが自分で気づく必要があるという残酷すぎるものなのも感動を手伝っていたと思います。

非常に悲しいビターな終わり方には救いが欲しいという気持ちもありますが、ずっと一緒に旅を続けてくれたオリビアがマリオ(プレイヤー)のために自己を犠牲にするという、愚かで優しい想いに打ちひしがれている一瞬後、すぐにスタッフロールで旅の終わりを告知されるという衝撃的な幕切れは物語として完璧だったと思います。

体験としては最高でしたが、悲しさや儚さも感じさせるのは、これまで一緒に旅を続けてコントローラーを振ってきた経験があるからこそ。
ゲームの楽しさがそのまま思い出になる、「アドベンチャーゲーム」として完璧なデザインにただただ拍手を送ろうと思いました。