ホラー嫌いな方がホラーを見たくない気持ちはよ~~~~くわかるんです。そういう人にこそ、読んで欲しい記事です。
・ホラーにもたくさんあって、ホラー好きの間でもびっくり系が好きな人ってあまりいないと思う
・ミステリとかSF好きならホラーも好きだと思うから、頑張って見てほしい
などについて長々と語っています。
この記事に書いてあること
前書き(時間無い人は飛ばしてもらって大丈夫です)
これ今でも仲がいい同級生のnoteで、この人と共に生きてきてホラー苦手な人がどれだけ日常生活でつらい思いをしているのか、たくさん聞かされてきたし理解しているつもりです。
ホラー作品がアマプラに来ても絶対にこいつはウォッチパーティに参加しないし、これ面白いよと若干暗めのゲームを紹介しても「苦手」と遠慮されてしまう。
それはもう間違いなくこのnoteの2項、『2.びっくりさせられるのが不快』という幼いころからの経験があってこそだと思います。
これはハッキリ記憶してて、トラウマとなってるのはおもしろフラッシュ倉庫です。シンプルな間違い探しのゲームだったのですが、最後の間違いをクリックすると爆音の叫び声と共に狂人の怖い顔がドアップで表示されるみたいな・・・
こういった経験からホラーというジャンル全てが苦手になってしまい、無理に誘われること自体が辟易している人もいると思います。僕も、なんならホラー好きでも、こういうびっくり系(最近だとジャンプスケア作品なんて呼ばれ方もされるくらい)が嫌いな人は多いと思います。
が、この理論でホラー苦手な人が他にもいるならば、それは本当に勿体ない事だと思うので、これから夏のホラー作品祭りに向けてもう一度だけチャンスをいただけないでしょうか?
ホラーはホラーで一括りにされていますがそうじゃないんです。
ホラー作品は仲間内でキャーキャー言いたい女子学生のものだけではなく、ハリーポッターや異世界作品のようなファンタジー、ノーラン作品のようなSFのような『ちょっと日常から外れた想像を膨らませてくれる作品』の親戚のようなジャンルだと思っていて、そういうのが好きな人たちが幼い頃の経験で全部触れられないのはホラー好きとしては悲しいのです。
実際、この友人は最近ホラー作品を一緒に見てくれる機会も増えてきました。今でも苦手そうなのは触りませんが、びっくり要素少な目で耐えられそうで面白そうな作品は見てくれるようになってくれてとても嬉しいです。『このテープもってないですか』という僕でもかなり怖いと思ってる作品を一緒に見てくれているのを考えると、びっくり系って本当に最悪だなと思います。
牡蠣嫌いな人に「この牡蠣はいけるから」と勧めるような野暮な行為だとは思いますが、これを読んでもう一作品だけ挑戦してみようかなとなってくれる人が一人でもいれば嬉しいです。
びっくり系(ジャンプスケア)ホラーは本当にホラーなのか?
そもそも、これってホラーなんでしょうか?
ちょっとやり玉に挙げたので「おもしろフラッシュ倉庫の、最後にデカい音と怖い顔出てくる作品」を想定しますが、これが好きな人ってこの世に存在します?
うおおお俺はウォーリーを探さないでが大好きで毎日見てる!なんて人が存在したら申し訳ないんですけど、これって友達にいたずらで見せるとか、掲示板の釣りリンクとかで重宝された作品で、面白くはないですよね?
冒頭の友人のように、ホラー苦手の人の半分くらいがこういうしょうもないびっくり箱ホラーでダメージを受けて、しかもガキの頃だったからトラウマになって……という黄金パターンで魂に刻み込まれている印象があります。
しかし、ホラー界隈ってこういうびっくりが「お約束」として存在するのも事実で、特に洋画のホラーはもうこれがメインみたいな作品が多いです。おそらく、『悪魔のいけにえ』や『オーメン』、『It』のような、「安心したと思って振り返ると…ドーン!」みたいなシーンがある映画がウケてしまったので、後続も続いたんだと勝手に思っていますが、これらの名作がウケてんのはジャンプスケアが凄いからでは無いですよね……キリスト教という下地がちゃんとあって、それを否定するような罰当たりなストーリーや刺激の強いスプラッタなどがあるからこそ、こういうシーンが活きているんです。
というわけで洋画と違って邦ホラーはびっくりシーン無いからホラー好きにはおすすめ!……とはなりません。名作と言われている『リング』『呪怨』なんかジャンプスケアのオンパレードですし、映画ファンが決める最強ホラー映画ランキングみたいなサイト見てみたら上から順に30個全部びっくりシーンあるじゃねえかとなってしまいました。
街中で全裸のオッサンが急に殴り掛かってきたらびっくりしますよね?ジャンプスケアホラーってそれと何が違うんでしょうか。暗いところでワーってデカい音鳴ったらそらびっくりするでしょ。でもそれって、「怖い」という感情ではなくて、「何?」って感情だと思うんです。ホラー嫌いな人って、ホラー好きの事を「オッサンに殴られたい異常者」と思っている人が多いと思いますが、少なからず僕はこういうの「はいはい、死ね」って思うタイプなので安心してほしいです。ただ、やっぱり映像作品には1個か2個あるものなので、本当に苦手な人は小説の作品をおすすめします。最低限ワーみたいなのはないので……想像する分めっちゃ怖いですけどね。
痛みを用いて作品を印象付ける。ホラー作品のエッセンスとして優秀だとされているのはわかりますが、もうそういうズルい演出はやめませんか?ジャンプスケアが無くてもちゃんと怖い作品は現代にたくさんありますよ?
びっくりだけがホラーじゃないんです
本題です。街中で全裸のおっさんに襲われる以外のホラーがあるのか?という人のために断言しておきますが、あります!というか、現代はそれがメインストリームなので安心してください。
ホラー作品を分類化してみましょう。格ゲーでいうところのキャラクターセレクトです。
『心霊系、カルト系、ヒトコワ系、都市伝説系、土着信仰系』
などなど、たくさんの材料があって、ここから2つくらい選んで遊ぶのが良いです。ホラー苦手な人も「ヒトコワ系ならいけるかも」みたいなのありませんでしょうか?僕は2ちゃんねるの心霊コピペとかが好きなので、土着信仰系ホラーが大好きです。「ガキが山の中の変な祠を破壊したら、地元の強い和尚に怒られる」系のやつたまんないです。
『サスペンス、ミステリ、不条理系』
これはオチや展開をどうするかの話です。サスペンスなら「人が死にながら主人公がどうやって死なずに生き延びるか」がメインになります。ミステリなら「何か不思議な事が起こっている原因を探る中、それに巻き込まれていく」ようになりますし、不条理系は「もう何がなんやらさっぱりわかんねえけど、こえーよ」です。
『ショート、ドラマ、群像劇、世代交代、ギャグ、モキュメンタリー』
作品スタイルを決めましょう。悪しき作品として例にしてしまったびっくり箱ホラーはショート作品に多いです。これは、「ストーリーの展開が難しいので、オチとしてびっくり箱を用意するしかない」という明確な理由があります。「ガキの頃(びっくり)ホラー苦手だったけど、短い作品でもう一度挑戦するか」という猛者が、もう一度蹴り落される理由がここにあると思っています。
たくさんの登場人物の情報を手繰り寄せて一つになる群像劇スタイルの作品は、単純にホラーの怖さよりも群像劇の面白さに感心させられる事が多いですし、過去(悪霊などに)殺された人の体験をもとに現代で立ち向かう世代交代系ホラーは少年漫画のような熱さがあります。怪異を蹴散らしていくギャグホラーならいけるよって人は多いでしょう。
そして、なんといっても最近流行りのモキュメンタリー形式はびっくり要素が少ないのでホラー苦手な人には真っ先に挑戦してほしいジャンルです。
モキュメンタリーとは「フィクションをドキュメンタリー映像のように見せかけて演出する表現手法」で、実際のテレビ番組や、雑誌のワンコーナーのような形式で物語が進んでいく以上、「デンデンデン……ワー!!」みたいな派手な演出は基本的には無いと思っていいです。だって現実に即しているという前提があるんだから、そんなことしたら世界観が破壊されてしまいます。「びっくり箱演出を使わずにどこまで人を怖がらせる事が出来るか」について一番研究がされているジャンルだと思います。
このように、ホラーで全部くくるのは無理なほど、このジャンルの分類は多岐に渡るんです。『心霊・サスペンス・ショート』作品の、電気消したらワー!みたいなのが苦手な人でも、『ヒトコワ・サスペンス・ドラマ』作品なら見れそうな気がしませんか?「幽霊の 正体見たり 彼女の母」みたいなやつです。
特にびっくり系しか体験したことのない人に、僕が好きなジャンルである「土着信仰・ミステリ・モキュメンタリー作品」の、じっとりした怖さを体験してみてほしいです。「そういえば、うちの近所にもこういう施設あるな…」とか、飛行機から景色を見ていたら「山の一部が剥げていて、そこになんか慰霊碑みたいなのがあるけどあれなんだ?」みたいな読んだあとのほうが怖いという体験は、日常を豊かにしてくれます。
ただ、ホラー作品を作っている人も客を楽しませようとしていろいろ試行錯誤した結果、(実際にそういうのが売れてしまった影響で)びっくり系が入ってきてしまっているというだけなんです。と擁護しておきます。
ホラーと親和性が高いジャンルは、SF
SF。サイエンスフィクション。幽霊とは真逆なジャンルかと思いきや、親和性の高いジャンルだと思います。知的好奇心の奴隷の皆さんにこそ……
ホラーはSFの「地球に正体不明の現象が起こり、それを解決するために危険な宇宙に繰り出す」ような作品と構造が似ていて「身の回りで何か不思議なことが起こり、その現象を究明するために調査を進める」というスタイルの作品が多いです。
『リング』はびっくり系演出もありますが、「見ると7日後に死ぬビデオがある」「ビデオを誰かに見せることで呪いは回避される」というルールをもとに行われるデスゲーム物でもあって、死を間近に控えた人間の醜さとビデオという当時身近に存在したものを用いることで観客も例外じゃないぞというメタ的な怖さも内包したエンタメごった煮の面白い作品だと思います。
ただし、ミステリと違うのは明確に原因が究明されないで終わることも度々あるというところで、これはかなり好みが別れるでしょう。SFのように、少し不思議なまま終わっても許せる。という人に向いている作品なのかもしれません。
おすすめの作品
おすすめの作品をいくつか紹介して終わります。
散々ここまでびっくり系をこき下ろしましたが、これらの中にもいくつかはびっくりシーンは入ってきてしまいます。ただ、ホラー苦手の人にお願いしたいのは、これらの作品はおもしろフラッシュ倉庫のような「人をびっくりさせる」事が本流なのではなく、いろんな理由で少し入ってしまう。というだけということは理解し、歩み寄っていただきたいという事です。
もちろん、それが難しい人も居ますので、やっぱ無理そうだなという人がいて当たり前です。ここまで読んでくださった人の中に少しでも「もう一度頑張ってみるか」と思ってくださる人がいれば嬉しいです。「やっぱ無理だわ!」って人が居たらツイッターで謝るくらいはするので文句はお待ちしています。
そりゃ分類したらホラー作品なんでしょうけど、僕が知る限り一番怖くないホラー作品です。というかホラーか?「幽霊と霊媒師にまつわるオモロイ話」というジャンルを作成してぶちこむべきではないでしょうか?ナンバーワンオンリーワンの素晴らしい作品です。
見てない人でもあまりにも有名な話すぎて「大筋は知ってる」という人が多い作品らしいですよね。僕はなんかの機会に見て、ラストシーンでえらく感動すると同時に「あっ!このオチ、この作品だったんだ!」と2重にびっくりするという体験をしました。本当に大好きな作品です。脚本が良い。
面白い映画という話題でシックスセンスを勧めると、ホラーで分類されているから見れないという人が居たのがこの記事を書くきっかけになっています。是非ここから挑戦してほしいのですが、今アマプラなど、どこの配信サイトでも配信が無い……金ローとかでたまにやってるのでその際は是非。
「なんでもあり・不条理モキュメンタリー」のフェイクドキュメンタリーQ。
この作品の良いところはマジでジャンプスケアが一切無い事。幼い頃見た心霊写真番組のような、じっとり怖いホラーを出し続けて17作。全てが素晴らしく怖いです。
ただ、17作あるうちの何か所かは、心霊写真みたいなシーンもあることにはあるので、怖い映像自体がそもそも無理って人はダメかも。気を付けてください。
詳細を知りたい人は僕がむかしねとらぼさんに書かせてもらったオススメ記事があるのでよかったらどうぞ。結構気に入ってる記事です。
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来るは後半の「日本最強のお化け VS 日本最強霊能集団」というジャンプみたいなバトル展開が面白くて、ホラーというよりジャンルはジャンプなんです。
ただ、序盤はがっつり胸糞系ドラマで、女の子がまんべんなくひどい目に合うので、ホラーというよりその辺に耐性が無いとちょっとな~という印象です。
『カルト』も面白いのでオススメなんですが、前半ホラー寄りだからこれとどっち勧めるかは難しいですね。
タイのホラー映画です。「土着信仰+カルト ミステリ モキュメンタリー」
怖い話によくある「田舎の変な信仰」のタイverの本作。びっくりシーンが2つくらいあるので注意。
寺生まれのTさん系が好きな人におすすめの作品です。
僕が一番好きなホラー作品です。「土着信仰 ミステリ 迷惑系ユーチューバーがボコボコにされるモキュメンタリー」です。
ホラー作品には、「映画見た人も死ぬよ笑」みたいな迷惑なメタ要素のある作品が多くあって、オモコロなどで活躍している梨さんの作品とかはそれ系が多くて大好きです。「見終わった後」怖いのが苦手な人には勧められませんが、やっぱり本当に怖いのって「安全圏で映画を見ていた自分が、実は安全じゃなかった」とわかった時の生存本能に訴えかける怖さだと思っているので、びっくり系じゃなきゃいけるぜ!という猛者がいらっしゃいましたら是非挑戦してほしいです。
ちなみに呪詛にはびっくり系もあるし胸糞もあるし女の子かわいそうも全部あります笑
「土着信仰・ミステリ・群像劇モキュメンタリー」の小説作品です。
この作品は雑誌に投稿された怪異譚の共通点を探っていくという内容で、バラバラだった要素が一つに集約する群像劇としてよくできていて面白すぎるのですが、たくさんの好きなところから一つだけ良いところを上げるとすれば、「怪異の原因についてしっかり説明しつくす」という真摯なオチにつきます。
結局何があったのか有耶無耶にしてもやもやさせるのが様式美みたいなジャンルなのに、本当にちゃんと最後までやる作品を読んで感動してしまいました。短いのでかなりオススメです。
先ほど「小説はジャンプスケアないからおすすめ」と言いましたが、最近電子書籍を悪用してそういうのやってる作品もあって、俺でもKindleぶん投げるくらいビビった作品としてこれを紹介しておきます。散々「見たら死ぬで」ってお札の怖さを説明してキモいくらい例を挙げられた後、唐突に「これがその札やでw」って挿絵が挿入されるシーンとか最悪すぎて大好きです。短編集でどれも面白いのでオススメですが、ホラー苦手な人はご注意を。