神ゲー『IN STARS AND TIME』感想(ネタバレあんまり無し)

面白かった!面白かった!! ああ……星たちよ……!

連休を費やすのにふさわしい素晴らしいシナリオととんでもない枚数の一枚絵。作り手の情熱が感じられるとんでもない作品だった。

ループものという特性上、何も知らないで遊んだほうがいいと思うので、やる予定の人はこんなの読まないで早くやったほうがいいのは間違いない。

プレイ時間20時間弱

 

 

同作は、「主人公とともにループを体験」できるRPG

ループを体験する物語は多く、自分も『シュタゲ』『サマータイムレンダ』『リゼロ』など気に入ったシナリオの作品をプレイしてきたが、ここまで主人公に没入してしまうシナリオや、メタな演出の使い方に感心させられたのはこれが“ゲーム”という媒体だったからだろう。

死ぬたびに「同じところから」始まるという苦痛

ラスボス前夜、苦楽を共にしてきた仲間たちとの感動的なイベントの前に主人公は目覚める。

「明日が終われば皆はどうする」「倒せるか不安だ」「絶対に故郷に帰ろう」……それぞれが口にする決意を表明し、敵ボスのいるラスダンに突入するRPGの“サビ”を毎ループ楽しむことができる。

 

……これが楽しいのは最初の数ループだけというのはみんながわかるだろう。起きた後に毎回同じセリフで主人公を心配するヒロイン、皆が元気になるようにとおいしいもので持て成してくれる少年……すべてが同じ味で記憶通りに進むことに、主人公はだんだんと擦り切れてくる。

これもラスボスを倒すためだと自分に言い聞かせながら、退屈なイベントや勝つことが分かり切った中ボス戦を何度も、何度もこなし、前ループで踏んだ即死トラップなどの「詰みポイント」を避けていくのだ。

しかし、本当に主人公シフランの苦痛をプレイヤーに全て追体験させるわけではない。イベントを「うわのそら」で聞き流しスキップする機能は早々に解禁され、ラスダンの階層ごとへのスキップ機能もある。

中ボス戦やカギ探し、妙に足が早いシンボルエンカウントなど「ループの苦痛」として作者が用意したものだけを気絶しそうになりながら遊ぶ必要がある。

娯楽として成立するギリギリのバランス感覚にも関心させられるが、これが主人公への感情移入を大いに助ける。だって主人公は、戦闘だけではなく前夜祭にも数十回、数百回参加し、変わることのない会話を繰り返しているのだから……という想像力が働くのがとてもよかった。

知的好奇心を刺激するシナリオが極上

こう書いてしまうとただただ苦痛の上にある感動のように聞こえてしまうが(実際自分もプレイ前にある程度こういう作りなのが想像できたため、すぐに手が出なかった)、実際は苦痛よりも「この先どうなってしまうんだ」と期待する部分が多いため、実は辞め時が見つからない面白さのあるゲームだ。シナリオがあまりにも上手と言っていい。

「あの知識を得たからこう変わるはず」という予測と期待が毎ループ存在するため、多少固い敵ボス戦も耐えてやろうという気持ちになるし、思ってもみない展開が何度も押し寄せるので、設定上は何度も同じことをしているが、プレイヤーが退屈に感じるシーンは戦闘以外ではほとんど無いと言っていい。

もちろん、苦痛に見合う素晴らしく感動的なラストが感傷たっぷりに味わえるのは期待通りだったし、お釣りが来るくらいだった。

ツクール製RPGでここまで面白いものが作れるというのも驚きだし、随所に感じられるMotherやUndertaleリスペクトな演出も素晴らしい。ゲーム好きであればあるほどニヤニヤできるシーンは多いだろう。

曲も、OMORI級の異常なスチル枚数も、演出もどれをとっても1級品。妥協のない研ぎ澄まされた完成度は、システムのチープさを凌駕してしまうという感動を2024年にもなって味わわさせてくれたこのゲームに感謝を伝え、この記事を終える。

(仲間とのシナリオについてここに書くのはもったいないので割愛するが、自分はオディールが一番好きで、最後の会話で一番泣かされてしまった。ああいうのに弱すぎる…ああ、カニったれ!)

余談ですが、仕事でも簡単に紹介記事をかけたのはとてもよかった。形態上シンプルですが、こちらも読んでもらえたらうれしいです。ああ、個人の情熱をここまで味わえる。インディーゲームとはなんてすばらしいものなのだろうか……!!

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