クリアまで10時間。10時間でこの満足感。すごすぎる。
人口の約1割が能力者として生まれてくる1960年代のロンドンという設定の推理アドベンチャーゲーム。能力者の起こした事件を、能力者たちが解き明かしていきます。
とは言うものの、能力を使って用意された証拠や証言を整理し、矛盾を指摘したり、可能性を消していくシステム自体は、『逆転裁判』や『ダンガンロンパ』などのオーソドックスな推理アドベンチャーゲームと変わりありません。
最初こそ独特なUIに戸惑いはしたものの、すぐに違和感はなくなり、物語に没入できる程度です。
このゲームのすごさは、シンプルに物語が面白すぎることにあります。
展開が早く飽きを感じさせないテンポで、読者が置いてけぼりにされないような細かな答え合わせをしつつも、その異常とも言える展開の速さを感じさせないような予想を裏切るトリックとそれを解き明かしたカタルシスが常に待ち受けている恐ろしい完成度でした。
過去たくさんの探偵ゲーを遊んできましたが、この満足度に並ぶのは『ゴーストトリック』『大逆転裁判2』『スーパーダンガンロンパ2の5章』くらいだと思いました。実際はそれ以上かもしれません。とにかく今はこれらの伝説の名作と並ぶとんでもなく面白い作品を遊べた幸せで酔いしれている状態です。
太っ腹なことに全5章中の2章までが体験版として無料でプレイでき、それらも序盤とは思えないほどの面白さでした。まだ間に合います、ぜひプレイを。
この先はちょっとしたネタバレ(というか、作品の雰囲気など)について語っていますので、未プレイの方はぜひプレイ後に読んでいただければなと思います。
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ここからは個人的な好みの話になりますが、ミステリに求めている「予想を裏切る展開」「納得のいくスキのないトリック」「わざとらしくないヒントでそれを解き明かす爽快感」といった要素については文句なしの出来で、それ以上にこのゲームが「愛」や「絆」といった感情のドラマをくどくなく、ロマンチックに書き出しているのが凄すぎると感じました。
最後までやるとなぜそういった要素があるのかがわかるようになっていますが、そういう設計段階の整合性とかそんな話ではなく、それらが凄惨なミステリと共存できるものだという驚きのほうが強く残っています。
まあ、ここまでなんだかんだごちゃごちゃ言いましたが、4章は一生忘れることのないとんでもない気持ちよさだったので、あんなにきれいな着地を見せなくてもGOTY級のゲームだということは揺るがないのですが、最後までスキのないシナリオにただただ脱帽し、拍手を送りたいと思います。
底冷えするような怖いシーン(もちろんジャンプスケアなどはありませんよ)は多くありましたが、僕にとって一番怖いのはこのゲームを作った人間がいるということかもしれません。