のすのゲーム感想ブログ

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Steamで登場した“無料のインディーパチスロ”『A-Rabbit』の愛あふれる作りこみが感動的だった

8月29日、オリジナルインディーパチスロゲーム『A-Rabbit』がSteamに登場しました。しかも無料です。
パチスロ愛”あふれる出来に夢中になってしまうほどですが、おそらくこれはパチスロ、しかもノーマルタイプ愛好家というほんの一握りの人にしか伝わらないのではないかと思います。

それはあまりにももったいないので、どういうところがアツい作品なのかをご紹介します。
少しでも多くの人が「はえ~」となってくれれば幸いです。

store.steampowered.com

そもそもパチスロという“ゲーム”は面白いものなの?

賭博の商材として開発されているゲームは、たびたび「お金を賭けているから」面白いものだ。という論調で語られがちです。
それに関しては否定できませんし、特に近年は既存の人気IPを駆使ししてどう賭博性を高めるかの競争になりつつあります。

しかし、本来のパチスロは非常に変わったゲーム性を持っている独自性の高いゲームです。なんせ「3つのリールだけで、大当たりを演出」しなければならないのですから。

実際に90年代付近の液晶すらついていないパチスロは、その3つのリールの織り成す法則性や、豆電球の光のみで人々を魅了していました。

Amazonより

00年代から『北斗の拳』などの版権もの……液晶でバトルが発生し、勝利したらボーナスといったわかりやすいものに徐々にシフトしていったため、現在はパチ屋の片隅に追いやられてしまいまいましたが、今でも一応90年代のような「リールと、シンプルな演出のみ」でゲーム性を表現している台は存在し、少ないながらも若いファンも獲得しながら細々と生き続けています。

2023年12月に導入

『A-Rabbit』は、そんな昔ながらの楽しさに魅入られたファンがこだわりを持って作った「実際にホールに置ける」パチスロゲームで、法律や業界内の自主規制など、細かく規定されたルールを忠実に守り、そんな制約の中で生まれる楽しさを見事に再現したオリジナルのパチスロアプリとなります。

もちろん液晶などはなく、3つのリールの「ボーナスが当たっている」組み合わせ(リーチ目)や、バックライトを用いたシンプルな演出で、ボーナス成立をいち早く察知する方法をプレイヤーが見つけることがメインの遊び方になっています。一円も得しないのに? それでも楽しいんですよ!

「ホールにあってもおかしくない」パチスロゲームであることのすごさ

「愛がすごい」だとか「これが無料かよ」みたいなものは90年代から脈々と続くパチスロ文化を継承していることからも伝わると思いますが、実際に遊んでみると多くのこだわりが伝わってきます。これもまた感動的です。

リールの回転速度は違和感なく一定(リール1回転の速度は実際に0.75秒までと定められており、多くの機種がこれを採用しています)で、ボタンを押した場所でリールの停止位置を決める「リール制御」も1フラグで1つという五号機以降のルールを忠実に守っています。
さらにサウンドFM音源「YM2413」を採用(『サンダーV』など4号機アルゼや山佐筐体に搭載されていた音源)しており、これもまたこだわりを感じさせます。

しかし、ゲーム性に関しては「俺が一番面白いパチスロを作ったる」という気合いを感じるほど、既存の“お約束”が通用しません。
マニアックな話になってしまいますが、3種類のBIGボーナスがすべて別フラグであったり、メインになる「予告音」「消灯」などは『バーサス』『サンダーV』『アレックス』などの名機を踏襲した遊びになっていますが、その法則性もオリジナルです。

リリース後すぐダウンロードして興奮しながら遊んでいる自分の気持ちが伝わるでしょうか?
21コマの3乗が織りなすゲームとの対話は、まさにアドベンチャーゲームや推理ゲームがもたらす驚きに近いものがあります。
「製作者はどういう意図でここにブドウを入れたんだろう」「なんでここにこの図柄は止まらないんだろう」
神秘性を秘めたパチスロというブラックボックスを丸裸にしたいオリジナルパチスロとの闘いは楽しく、熱狂的なものなのです。
配信してます。よかったら)

「オリジナルパチスロ」大手はポケモンドラクエだった

2010年頃、ハンゲームがやっていたパチンコ・パチスロアプリでは、課金して購入できるメダルを使ってオリジナルの台を遊ばせるアプリがあり、筆者はそれに夢中になっていた時期がありました。(交換はできず、いわゆるメダルゲームと同じ形式)

しかし、現在のななぱちでは実際にホールにおいてある機種をアプリ化したものがメインになっており、オリジナルのものは少なくなっています。(寺井一択さんとのコラボとかそういう方向になっていて、それはそれでおもろいけど悲しい…)

ほかのオリジナルパチスロでいえば、パチンカス以外にも話題になった『ドラクエ11』のマジスロや、

ポケモンは初代、金銀、ルビサファ、ダイパまで独自のパチスロを作り続けていた、いわばインディーパチスロ界の大手企業です。

自分が知っている中だとこれくらいしかないのですが、デカい企業に潜り込んでいるパチンカスのこだわりに触れるたびにうれしい気持ちになっていました。
そんな中、Steamで『A-Rabbit』がリリースされると知ったときは小躍りするほどうれしかったものです。世の中にはまだこんな変な人がいたのかという驚きと、偏執的なこだわりはまさにインディーゲームならではだと思います。素晴らしいです。

パチスロという負の側面の多いものをわざわざ開発しようと思うのはなかなか難しいものがあるのかもしれませんが、『A-Rabbit』をきっかけにオリジナルパチスロブームが到来したらいいな。いずれ自分も作ってみたいな。
そんな気持ちを抱かせる心意気やアツさを感じさせるゲームでした。

かなりハイコンな面白さなので、遊び方やどうやって楽しむのかを説明する記事を数日中に出したいと考えています。
よければそちらもご覧いただければ幸いです。