面白かった。
本当に生きていてよかったと思った。
人並みに何度か死んじゃおうかな~と思ったこともあったが、あの時死ななくて良かったなと思った。
『羅小黒戦記』は中国発のアニメ作品だ。
2011年頃からWEBサイト上で無料公開していたFLASHアニメ版が評判を呼び(後述するが、これも死ぬほど面白い)、区切りの良いところでサプライズ的に劇場アニメ化。
その後日本では字幕付きで少数の劇場で公開されたのち、これも評判が評判を呼び花澤香菜氏などの日本語吹き替え付きで全国上映を成し遂げる。
プロモーションやキャスティングにも努力があるが、何より「面白さ」でのし上がってきたと感じる作品だ。
WEBで公開されている初期の羅小黒戦記は、中国の日常に人語を理解する超能力猫ちゃんが紛れ込んだら……という日常モノに近いテイストが感じられる。
日本人からすると、中国の田舎の暮らしや、物語でしか見たことが無いような美しいロケーションも魅力の一つだ。
作品は一貫して「人間と妖精の共存」……メタファーとしては異文化とのわかり合いを描いている。
“快適に暮らすためには誰かの領域を侵犯することもあると自覚し、それでもなお、お互いに歩み寄るためにはどうしたらいいのか”というテーマを、ギャグや非常に小気味良いアクションシーンを交えて語るのだ。
特徴的なのが、人間vs妖精という描き方はしないことだ。人間は自分たちの暮らしを豊かにするため、森を壊しマンションや公園を建てる生き物。というのは大前提として、作中で脅威として描かれるのは、人間に立ち向かおうとする妖怪の暴走であることが多い。
つまり人間も妖精も一枚岩ではなく、善悪は個々人で判断すべきもので、できるだけ歩み寄ることが長期間の安寧を実現するという想いが作り手にあると推察できる。
文字にすると非常に堅苦しいテーマではあるが、これを映画1作目では、生まれたばかりの猫の妖精「シャオヘイ」の主観と、達観した大人の「無限」2人のバディもので巡らせる。
最初は居場所を追われ、助けられた妖精すら傷つける「人間」に敵愾心を燃やすシャオヘイだが、その「人間」が「師匠」となり、「無限」という大好きな存在に変わっていく感情がありありと伝わってくる。もちろん、アクションやギャグなども盛りだくさんで隙が無い。
WEB版でも何度か「師匠」の存在を匂わせており、ほぼ初のお披露目として登場した師匠が非常に面白く、強くて変な人だったのでファンは心躍ったであろう。自分は映画化から入ったので、古参ファンがとても羨ましく感じる。
映画から入った時点でかなり面白い作品だと思ったが、自分がここまで心酔するほど感動したのは、WEB版の27話以降(映画1作目の後にBilibiliで放送された)を見てからになる。
今日本では翻訳版が地上波放送されており、是非自分の目で見てほしいので詳細は省くが、ここからの戦闘シーンの描き方ははっきりいってレベルが違うものになっており、視聴者の眼力を試すようなとてつもないシーンばかりになる。
映画1作目の最終戦、シャオヘイ(ヘイシュ)が空間属性の能力を用いて無限の座標を操りながら戦うシーンも三次元的な戦闘が面白く、ゲームで言うとミニマップが更新されていくような感覚を覚えたが、これを10倍に強化したような、情報の奔流ともいうべき戦闘に唖然としたのを覚えている。
「シャオヘイがこういう能力で、敵はこういう能力。今このキャラクターはこういう場所でどういったステータスになっているから、こうすることでこうなるはず」という情報が画面を見ているだけで伝わってくる。視聴終了後、すぐさま2度目、3度目を見るほど感動し、1度目ではわからなかった細かい重力や姿勢のこだわりが感じられて今でも思い出しては見ている。
ちゃんと日本地上波版でもそこまでやるようなので、ぜひ楽しみにしていてほしいし、映画しか見ていない人は今から追いついてリアルタイムで追ってほしい。その価値は十二分にあるというか、もったいなさすぎると正直に言っておく。
(ここから映画2の内容を語っているのでまだ見ていない人は映画館でぜひ見てから読んでください)
映画2作目はこのWEB版で進化した戦闘シーンを、映画版の超絶作画で見せてもらえる贅沢で感動的な作品だった。
開幕の残虐な近代兵器戦、赤子の手をひねるように無双する土属性の室内戦など、能力を変えると戦い方や見せ方ががらりと変わるのが飽きさせない。
でもやはり、一番心躍ったのは終盤の姉弟子との共闘シーンだ。まさにWEB版で感じた感動……瞬きすると置いて行かれるような能力×高速移動のとんでもない戦闘を、恐ろしい予算で描ききっている。
ここまでやったら視聴者はわからないから加減しようといった配慮は一切ない。しかし、非常に優れた映画的カメラワークやキメの作り方でかっこいいのは理解できるし、恐ろしい情報量にも関わらず優勢・劣勢は表情やセリフで非常にわかりやすい。ハイコンテキストではなく遠慮がないだけで、視聴者全員楽しませてやろうという気概があるのが羅小黒戦記はとてもかっこいいと思う。
ほとんど赤ん坊だったシャオヘイが2年間でどれだけ成長したのか。無限と楽しくやっているのかという見たかったものを120%楽しませてくれる作品で、
心も体も成長したが無邪気さも持ち合わせるかわいらしいシャオヘイと、年の功を感じさせる姉弟子のさらなる強さ、そしてもはやバケモノとも言うべき無限がたくさん見れてとにかく満足感が強い。
「俺だ、師匠だぞ!」→「回想……(ニコォ)」と「最強の妖精……哪吒……!」のシーンは劇場のほとんどの人が声を上げ笑っていてとてもよかった。あんなん笑うでしょ
ギャグは少な目だったと思うが、この二つが渾身すぎてとても印象深い。
無限が容疑者として招集されたシーンでは、止められる哪吒をボディガード的に呼んでるんだなというのが説明されなくてもわかるし、
1000年の歴史がある転移門で、哪吒と結託してバレバレのケンカで破壊しようとして土属性のオッサン脅すシーンも、キュウ爺がヘラヘラしててグルっぽいところとか、
とにかく戦闘以外でも画面の情報で背景を語るのがうまいし、そういう行間を読ませるシーンをたくさん作りたいんだなと作り手の想いを感じられた。
唯一、中国の映画ということで敵(利用されてるだけっぽい描写はあるが)が英語を話す西洋人風の軍隊だったのだけはかなり政治色を感じてノイズではあったが、
ロシア語を話させるわけにはいかないので仕方ないようにも感じる。そのおかげで無限の激面白空中闊歩が面白かったのでありがとうという気持ちでしかなかった。
世界がもっと仲良ければこんなノイズも無いのになあと思いました