個人的GOTYはなんだ!? 【後編】 1年間脳を焼き続けた『Lobotomy Corporation』と『Library of Ruina』について

2023年GOTY記事、後編では1年間僕の脳を焼き続けたある2つのタイトルについて語らせていただこうと思っています。

2023年GOTY記事前編はこちら

 

『Lobotomy Corporation(ロボトミー)』とその続編の『Library of Ruina(ルイナ)』という2つのゲームを2022年12月から1月にかけて遊んだのですが、そのあまりの面白さは今年いっぱい僕の脳を焼き続けました。

間違いなく僕の生涯でベストとなった作品で、その面白さは終わった後に「これ以上面白いゲームには出会えないかもしれない」と本気で思うほどでした。実際に4月あたりまでは何をやっても集中できず、燃え尽きたような症状に悩み、苦しみました。

今年の12月に、前編の記事で"個人的GOTY"とした『SANABI』に出会うことができ、やっと救われましたが、結局約1年間「今後ゲームを遊ぶ必要があるのか」という気持ちに襲われるほど、とんでもないゲームだったのです。

 

この2タイトルは「ゲームでしか表現できないこと」を追求し続けた結果生まれたような作品で、もちろんネタバレ厳禁な内容ばかりです。なので、本当は「すぐにでも遊んでくれ!!」と布教したい気持ちですが、実はこの2タイトルは心を徹底的に折るような難易度をしており、プレイ時間もクリアまでで100~120時間程度かかるという恐ろしいボリュームのゲーム……。

そんなゲームをおいそれと勧めるわけにはいきませんし、おそらくロボトミーの序盤で「なんだこのゲーム…」と思ってやめてしまうと思うので、ほんのちょっとだけネタバレさせてもらって少しでもこの2つのゲームに興味を持ってもらおうという記事になっています。

一切ネタバレされずにやりたいぜ!という方はお気を付けください。

ロボトミー』は何が面白い?

ロボトミー』は、SCPなどを元ネタにした「怪物」がうようよいる施設でエネルギーを集めるという特殊なシミュレーションゲームです。

ルールもわからずこの施設に放り出されるシーンから始まり、プレイヤーは徐々に施設管理のルールや、飼育されている怪物たちを理解することで仕事をこなせるようになっていきます。

この「知っていくこと」が全編を通して焦点になっており、怪物やゲームルールに留まらず、世界観、NPCたち、ストーリーなどありとあらゆるものと向き合い、「知る」ことでゲームを進めることができるというのがゲームならではの体験で面白いです。クリア後に見る世界は、プレイ開始直後に見たものとは大きく変わって見えることでしょう。

 

特に中盤、ゲームの内容が大きく変わるような「中ボス戦」からこのゲームは本性をむき出しにして襲ってくるようになります。非常に歯ごたえのある体験と、それを「知った」時の喜び。そして踏み越えて先に進んだ時の達成感はどれも一級品です。

『ルイナ』は何が面白い?

カードバトルアドベンチャーゲームとしてゲーム性が完全に変化した続編の『ルイナ』は、はっきり言って全てが面白いです。

まず感動的なのは、発想力と工夫で戦ったあまり予算のないインディーゲームだった『ロボトミー』が売れたことで、『ルイナ』では恐ろしいほどのお金がつぎ込まれていることです。オープニングはアニメが流れ、Miliが歌い、とんでもない枚数の絵で物語が彩られています。

www.youtube.com (アニメはロボトミークリアしてから見たほうが感動すると思うので、音楽だけのやつのやつを置いておきます。是非聞きながら読んでください。)

人の小さな発想から生まれた小規模のゲームが成功し、次回作ではその世界観をもっともっと多くの時間と予算をかけて研ぎ澄ましたタイトルが出る。ゲーム好きとしては本当に喜ばしいことで、当時のファンの心境を考えるだけで嬉しくなってしまいます。自分ももっと早く遊んでそれを味わいたかった……!

ゲーム部分も褒めるべきところはいくらでも見つかります。カードバトルゲームとして見れば、とんでもない数のテーマデッキが存在する中から自分だけのデッキを作成し、全てがボス戦で構築されている戦闘を徐々に突破していく試行錯誤の楽しさが味わえると評価できますし、アドベンチャーゲームとして見れば、恐ろしい数のスチルで描かれる重厚な世界観のゲームとして評価できます。(ゴア要素が多いのは人を選びそうですが、世界観が重い分キャラクターは前向きな人物が多いです。)

そして何より素晴らしいのは、『ロボトミー』の良さであった、プレイヤーが何もかもわからず全てを「探求する」ところから始まるという要素を、「カードバトル」に落とし込んだ戦闘です。

自分の戦力やルールを“理解”し、敵の戦略を“把握”し、それでもなお予想ができない敵の猛攻をアドリブで突破していく戦闘は、一切無駄がありません。

もちろん、ただステータスだけで突破できるような戦闘は無く、カードのシナジーや、敵のギミックを理解するために専用のデッキを組む必要があるものばかりです。このパズル的な要素も非常に面白く、頭を使う楽しさがありました。

また、そんな前作の良さを引き継ぎながらも、理不尽な初見殺しや体当たり的な要素は完全に廃止。敵の強みなどはパッシブスキルでしっかりと説明されるため、負けた時に自分の責任だと思えるところも素晴らしかったです。

そしてそして(まだ続く)なんと言っても『ロボトミー』の世界をさらに広げるような素晴らしいストーリー! それを支えるのは、完璧と言ってもいい日本語翻訳と、素晴らしい声優さんたちによる韓国語フルボイスの朗読です。

最初こそ韓国語ならボイスは切ってもいいかなと思ったのですが、気合の入った演技は言葉がわからなくとも確実に没入感を高めてくれます。絶対にボイスありで楽しんでほしい……!

ティファレトの声優さんは韓国語版『羅小黒戦記』のシャオヘイ役の人らしい

すべての敵が倒すべき存在であり、「なぜ」戦うことになってしまったのかの理由があります。中盤からは叫ぶほど熱いシーンが2時間おきに来るため辞め時がなく、気づいたらクリアして燃え尽きてしまいました。『ロボトミー』は辛さ半分、面白さ半分のゲームでしたが、『ルイナ』は最初から最後まで楽しさに満ち溢れたゲームと言えるでしょう。張りたいスクショが1000枚くらいありますが、涙を呑んで自重します……。

ストーリーの概要

遠くて近い未来、世界は「翼」と呼ばれる26の企業が支配するディストピアと化していました。「翼」たちは“特異点”と呼ばれる超常現象に近い技術を持った企業で、人々に大きな恩恵と絶大な格差を生み出していました。「翼」に務める人々には多大なる富を、それ以外の人々は人間扱いすらされていません。

『Lobotomy Corporation』は、「翼」の1つでありタイトルでもある「Lobotomy社」を描いた作品で、世界の電力供給を担う企業の社員となり、日々の目標エネルギーを達成することを目指していきます。

しかし、なぜ電力供給会社に怪物たちがいるのでしょうか? なぜ、ゲーム内では不思議なことばかりおこるのでしょうか? そんなプレイヤーの“なぜ?”にしっかりと寄り添う答えが、きっと見つかるゲームです。

なぜこのゲームが人に勧めにくいのか

ここまで大好きなゲームを人に勧めづらいのは、単に「『ロボトミー』の続編だから」という理由です。完全に続き物なのでクリア後、もしくはある程度プレイした状態で遊ばないとほとんどストーリーや演出が理解できないのです。

なので問題は『ロボトミー』です。人間の心を折るために生まれたようなこのゲームを人にオススメする以上、しっかりと欠点を分かったうえで挑戦してほしいという思いがあるため、ここからは『ロボトミー』の悪口を列挙していこうと思います。

誤解してほしくないのは、『ロボトミー』も『ルイナ』と同じくらい面白く、感動的なゲームであるということです。ただ、後者がエンタメに特化しているファンサの塊のようなゲームなのに対し、『ロボトミー』は「つらいけど、気持ちいい」というちょっと変になるゲームなので、悪いところを把握したうえで、良いところを味わってほしいという感じです。是非踏み越えて、ルイナまでたどり着いてほしいと思います。

 

仕様が説明されないのに急にゲーム性が変わる

未プレイの状態では非常にシンプルな見た目の施設管理シミュレーターでしかないこのゲームは、プレイ中何度もゲーム性を変化させ、プレイヤーを驚かせてくれます。

それは地の文で説明してくれるものではなく、体験を伴うことで認識が変容するというものです。しかも、それが数十時間単位で何度も訪れるところがこのゲームのすごいところ。自分が最も好む体験でした。

しかし、それは最初から独特すぎるゲーム体験にもかかわらず、慣れてきたそばから新しい難しさに挑戦し続けなければならないということを意味し、辛さの一端も同時に担っています。

基礎となる踏み越えてきた部分はしっかりと行ったうえで新しいことに挑戦しなければならない上(職員の装備やステータスで楽できることは増えるにしろ)、最初から最後まで当たって砕けろなゲーム性なので当たり前のように施設は壊滅し、それに伴う20分単位でのやりなおしも頻発します。

このゲームが「仕事」などと揶揄される部分です。

 

先が見えない

2つ目は、「この先どういったリソースが必要で、どこまで余力があればクリアできるかの見通しが全く立たない」ということです。そもそもクリアのあるゲームなんだと驚く人もいますが、実は明確にクリア条件があります。

「これまだクリアじゃないのか」という瞬間が何度か訪れ、職員の人数など取り返しのつかない要素も多いため、結局また10時間ほどかけて最初からやり直さないとクリアできないことを察した瞬間の落胆はかなりものです。(2周目からは驚くほど素早く日付を進められるようになるため単純なトレースにはなりませんが、それでもしんどいはしんどいです)

単純にwikiなどでクリアまでの流れを知ることでこれは回避できますが、やはり体験を損なうためおすすめはできません。

もちろん、その条件は1つ1つが極上の体験と難しさを伴うものになっています。ボス戦とも言うべきそれを初めて体験したときから、一気にこのゲームへとのめり込んでしまい、1日のプレイ時間も飛躍的に増えました。

 

いくらなんでも理不尽すぎる

3つ目は、ローグライク要素があまりにも理不尽すぎることです。おそらく未プレイ者が予想する3倍くらいは理不尽です。

メインとなる怪物管理は1日につき1〜2匹ずつ増えていくのですが、“ある程度”難易度曲線に則ったプールの中からランダムに3体が選出され、そのうちの1体を選ぶというものになっています。

怪物それぞれにフレーバーテキストが表示されますが、正直意味不明なものや罠のようなものも多く、一切信用ならないので、実質ランダムでよくわからないバカ共が増えていきます。

取った瞬間「これやり直したほうがいいだろ」と思うようなめちゃくちゃ迷惑なウンコはまだマシで、「一見無害そうに見えて、とんでもなくヤバいヤツ」「ある特定の瞬間だけ異常なほど迷惑になる」ステルスウンコたちの存在が厄介です。

だいたいが5日おきのチェックポイントを通り過ぎてから、深刻さに気づいてしまうため、「1日目からやり直す」か「こいつを抱えてそのままクリアを目指すのか」の選択を迫られるのが、とてつもないストレスであり、面白さでもあります。

ロボトミー』という邪悪なゲームを倒すためには

いくらなんでもこのアブノーマリティは反則だろ。

ヤバいやつに遭遇して、二度と出会わなくするのも攻略のうちです。21~25日を繰り返して、情報と武器を収集し、ピック画面で名前が出るようになるとかなり楽になります。

途中でやめてしまうくらいなら、もう攻略を見ましょう!

・いちいちアブノーマリティの好み探るのめんどくさいんじゃ!
wikiの作業効率ページを解禁する。

ちまちま開けていくのも楽しいけどね……終盤はしんどい

・とったら詰みみたいなやつ多すぎなんじゃ!

→自分もこれに耐えられず、有志の方がまとめている「アブノーマリティランク」を見ながらクリアしました。

こんな感じでどうしても耐えられないところが来たら情報を解禁して自分で難易度を下げつつ遊ぶのがおすすめです。

ボス戦の攻略情報やアブノーマリティの対応方法を調べてしまうと作業ゲーになってしまうので、あくまでもしんどい部分を潰すにとどめるとよいかと思います。

終わりに

『ルイナ』は『ロボトミー』クリア者へのご褒美のようなゲームです。心行くままに120時間に及ぶご褒美を堪能してください。

特に「ゲームならではの面白さ」「予想もつかないような面白さの拡張」というところにピンとくる方には是非遊んでほしいタイトルです。

すぐにとは言いません、老後の楽しみでもいいと思います。ゲームに狂う自分が生涯で一番面白いと豪語するこのゲームタイトルを覚えて帰っていただければ幸いです。

発売はかなり前ですが、2023年プレイした中で最も面白かった……いや、この先こんな面白いゲームに出会えるかわからないほどの喜びを与えてくれた『ルイナ』にただただ拍手を送り、今年を終えようと思います。

どうか、あなたの本が見つかりますように。