「ウサギ穴を覗いたとき、ウサギ穴を覗いているのだ」パクレットのウサちゃん捕獲ゲーム 感想

ふざけた一発ネタのパズルゲームみたいな見た目からは想像もできない情報戦と、深淵を覗き込むような深い絶望を体験できる素敵なパズルゲーム。

「これ絶対ジャンプスケアあるやん」ってウキウキして買ったらそれは無い。たぶん。このゲームを味わい尽くすのは、自分には不可能だったので、もしかしたらあるのかも。

 

 

パクレットのウサちゃん捕獲ゲーム(Pâquerette Down the Bunburrows、1400円)は、ちょい荒なゲームボーイカラーを彷彿とさせるピクセルアートと、バチバチにキマったチップチューンで彩られたパズルゲーム。

ゲームはシンプルなウサギを捕まえる倉庫番パズルゲームで、その体験のほとんどはウサギの習性を理解するパートに集約されている。それ自体が面白いので詳細は後半のネタバレパートに記載するが、とにかくこのウサギは賢く、精密な判断を行う。

ウサギを捕獲するゲームと聞くと、スーパーマリオ64のウサギを思い出す人も多いと思うのだが、このゲームもまああんな感じだ。

マリオは細い路地にしかいなかったかが、このウサギとはさむいさむいマウンテンみたいな広いマップで戦うことになるため、とりあえず端に追い詰める事から始めよう。

ステージは100面近くあり、10秒で解けるステージもあれば1時間悩んでも解けないステージもある。Baba is youほど全てのパズルに無駄がない。という感じではないが、約30分間隔のプレイで解放されていく新しいアイテムがいいアクセントになっていて退屈はしなかった。

上を通らせる事でウサギの足を止める「檻」、壁を掘ることができる「ピッケル」、ウサギの行動特性を一度だけ無視させる「エサ」などのアイテムが解放されていくたびに、複雑さ難しさが高まっていくが、プレイヤーもウサギへの理解が深まっているため、意外と難易度の上昇曲線はゆるい。

ストーリーは意味不明で、主人公は偏執的なまでのウサギ好き。なぜそこまでしてウサギを追いかけるのかの説明も「ウサギが好きだから」で済ませてしまう。明らかにジャンプスケアがありそうな見た目もあって、無駄に緊張しながらプレイしたが、露骨なびっくり箱要素は無かった。 ……が、そんな粗雑なジャンプスケアなんかよりもっと恐ろしいものが待ち受けている。なんだろう。例えてしまうと察せてしまいそうだが、初めてコストコに行ったときのような恐怖だった。「洗剤が……12個セット売り……?」みたいな。伝わるかな……

倉庫番とウサギが好きな人にはオススメだが、コンプ癖がある人にはおすすめできない。コストコの中で永久にさまよう可能性があるから。

 

以下、ネタバレ感想。

 

 

 

 

 

ウサギの習性を理解していくゲーム性は非常に面白かった。

・ウサギは後出しで行動する。

・ウサギは上下左右3マス先の視界が存在し、主人公を感知し逃げる。

・ウサギは斜めも含めた8マス分の視界が存在し、袋小路や檻を感知しているとそちらには逃げない。

・曲がるときは左を優先する。

などのルールが存在する。そのため、一見追い詰めたかのように見える2×2のこういう状況では捕まえることができない。必ずすれ違い、逃げられてしまう。

ではどうするかというと、「視界が隣接した8マス」にしかないことを利用する。
2マスの隙間があるここをピッケルで破壊。

ウサギは先ほど作った穴を認識できないため、簡単に捕まえることができる。

 

このように、このゲームでは2マス以上の通路+行き止まりの曲がり角を作ることが大前提の攻略方法となる。15×9の画面で巧妙に隠されたこの法則をまずは考え、それに適合しない場合は何か別の手段が必要となる。という寸法だ。

これに気付くまでが非常に楽しい体験だったので、ここで終わっておけば「まあ少し値段は高いけど、面白いパズルだったね」で終わることができたかもしれないが……僕はこのゲームの深淵に触れてしまったので今の感想は「……キモっ」である。

 

このゲームの気持ち悪いところは大きく分けて二つ。

一見すると、穴に潜っていくゲーム性からこれらの穴が独立しているように感じるが、実際はPVでも明示されているように、真ん中の黄色穴から全ての巣穴が繋がっているということが一つ目の深淵だ。

これは真ん中のステージ1が「C-1(Central-1)」、右のステージ1が「E-1(East-1)」であったり、とにかくヒントが多い。

外壁を壊すことができる分のツルハシを所持している場合、

このように外壁を壊してC穴からN穴に移動することができた。

このギミックによって、道中に存在した絶対に捕まえられないウサギを捕獲することができるのだが、問題はそこではなく「スクロール後はアイテムの個数が回復する」という要素が非常に厄介だ。

この手番から戻ることによって

ピッケル(左上)が2個の初期まで戻り、かつ「主人公が侵入した場所のブロックは破壊される」というルールによって、余分に1個壁を掘ることができる。つまり…

こういうことだ。

まあこれはいい。問題はもう一つの深淵「交配システム」だ。

右上にウサギの捕獲数が表示されているのだが、なんか小さい数字があるだろう。

シャベルを使うと、穴を作成することができる。

落ちた。ウサギとウサギが出会うとどうなると思いますか?

なぜ冒頭で「10秒で解けるステージ」が太フォントになっていたかわかりましたか?

 

こんなんジャンプスケアよりよっぽど怖いわ。