終わり悪ければすべて悪し 龍が如く8感想

序盤の楽しさと終盤の面白くなさにあまりにも差があった。

以下ネタバレ注意

これは間違いなく名作になると思った中盤から一転、あまりにもひどい終盤の展開と風呂敷の畳み方、そしてRPGをバカにしているとしか思えない適当な集団モブ戦祭りのラストダンジョンで一気に気持ちが冷めていった。

褒めるべきところはいくらでもあるが気になるところがそれよりも多く、シリーズでランク付けするなら0,ジャッジアイズ,7には遠く及ばず、令和のフルプライスRPGとして考えても人様に勧められるような出来ではなかったと感じた。

ストーリー

7の後を描く今作は春日一番がこれでもかというほどの男気を見せつけながら始まり、恐ろしいほど金をかけたカットシーン(カットシーンや演技の良さはエンディングまで続いた)も後押しして夢中で楽しめるものだった。

どれだけ他人に裏切られようとも他人へのやさしさですべて解決する『ヤクザ』と対極の男は、(作りこまれてるとは言い難いが)楽しいミニゲームやアホらしいサブイベントに全力で参加する主人公としても最良で、動かしていて楽しい存在だった。

しかし終盤、結局のところ「肉親が巻き込まれた事件に巻き込まれた」だけだったという、あれだけ綺麗に終わった7のストーリーからどうやって続編を作るかに尽力したとしか思えない設定が明らかになってくると、なんでもかんでも情けをかける感情移入のできない主人公として裏目に出始めていたと感じた。

特に物語のミソである「ネレ島の問題をどうするのか」についての解決方法が「衛星をハッキングして場所を特定する」、というあまりにもなもので、それを見越していた敵方の対応方法も稚拙。笑えるので一見の価値はあるが、今作の敵のトップ集団は最後までボンクラで、「悪者を完璧な手段で追い詰めてボコる」というシリーズ共通で大事にしてきたカタルシスがおろそかになっていたと思う。

一番も桐生ちゃんも今回の話に「関係あるといえばあるけど、そこまででも」という感じで、桐生ちゃんがラスボスをものすごい熱量で救おうとするのも説得力があるとは思えなかった。シナリオを期待して買ったものとしては残念だったと言わざるを得ない。

マフィアのボスが最終的に肉弾戦で襲い掛かってくるというのはお約束でもあり楽しい展開なのでバラクーダくらいまでは「なんでだよ」というツッコミを入れながら楽しめたが、さすがにラスボスまでそれが続くのはどうかと思う。

0や7のような激重超絶伏線回収を期待したが見事に肩透かしなシナリオだった。最後に逆転ホームランを打つと信じていたのに。

ミニゲーム

アホらしいサブイベントはどれもくだらないながらも笑えるもので違和感なく収集できる楽しさがあったが、豊富なミニゲームはどれもこれも「こんなもんでいいか」を感じる出来でもうちょっとどうにかできたのではないかと思った。

特に気になったのは、今回目玉になっていたドンドコ島で、カブトムシや貝殻などの収集物の配置が全く同じところなのはシンプルさを必要としたからだろうか。たぶん楽したかったからなのではないか。フルプライスなのに?

RPG

一番文句を言いたい部分。

キャラ育成に関してはかなり作りこまれており、基礎ステータスに関連するキャラクターレベルとは別にジョブごとのレベルが用意されていて、このレベルを上げることで技がどんどん解放されていき、ほかのジョブでも使用することができるというもの。

誰をアタッカーにし、誰を補助役にするかもある程度(女性ジョブがサポートに強かったりはする)自由に決めることができ、火力アップ、防御力ダウンなどのバフ・デバフが強いのもあって戦い方をかなり自由にカスタマイズすることができる。方針を決めてダンジョンに潜るレベリング・稼ぎの楽しさはRPGというカテゴリでもかなり楽しいほうに入る素晴らしいものだった。

ダンジョンに潜る以外レベリング効率のいいモノがなく、いちいち扉を開けてエンカウントしてを繰り返す作業は正直ダルいが、そこまで長くやらなくていいので許容範囲内だったと思う。

ただ問題は、そこまで楽しくレベリングしても発表会的な終盤のボスやラストダンジョンがあまりにもチープなことだった。同じ造形の敵が7~8体同時に出てきて、デリヘルや全体攻撃で処理するのを繰り返すだけ。これレベリングと同じ体験なんですけど……。一番サイドに関してはサメ、イカなどのギミックボスもあり少しはマシだったが、桐生サイドは途中ベホイミを使って嫌がらせしてくるバカが出てくるくらいであとは数が多いか固いかだけ。あんなに準備したのにただただ残念だった。

開発サイドでツッコミは入らないのだろうか?7でもあれだけドラクエドラクエ言ってるのに戦闘こんなに力入ってないのかと思ったが、今作は育成が良くできているからこそ戦闘のチープさが目立つ。開発者は同じ敵がA~Gまで出てくるドラクエをやったことがあるのか?本当にドラクエ11をプレイしたか?

ペルソナ5ドラクエ11のような近年の名作と言われているRPGがどのようにコマンド戦闘という昭和から続くシステムでプレイヤーを楽しませてきたか。そんな勉強や研究とは程遠い作りになっていて憤りを感じたし、ただただ悲しくなったラストダンジョンには大いにがっかりさせられてしまった。

リッチなカットシーンやキャラクターの演技、楽しいサブストーリーや作りこまれた育成など面白い部分で余裕で元は取っているが、一番求めていたストーリーの精巧さと、期待していなかったのに余裕で下回ったRPGに対する解像度の低さが最後の最後まで残念な気持ちにさせられるゲームだった。