Library of Ruina 感想

例としていくつか戦闘シーンなどを抜粋しているので気を付けてください。

 

カードバトルRPG付きのサウンドノベルみたいなゲームなんですけど、とにかくゲーム性での表現力がすさまじいゲームで、何度も拍手してしまいました。
このゲームが遊べて良かったと心から思います。

ストーリー

ディストピア世界で体を機械にしないと生きていけないような過酷な環境なのに、妙に人間臭い敵キャラばかり出てくるゲームでした。
「お前が勝ったら情報を、俺が勝ったら死を」という契約の元始められる戦いなので、全ての敵を踏み越えて行くわけです。それがどれだけ殺したくない人間でも例外はない。
戦闘前に『どうしてこいつが図書館に来ることになったか』という背景を覗き見し、戦闘に勝ち、そいつがどんな奴だったかを主人公とヒロインが語るという流れがある以上、どうやっても敵の出番は1つか2つのカットシーンでしかないのに、妙に頭にこびりつく印象的なキャラクターばかりなのは、戦闘での表現力の賜物でしょう。
ギミックを理解することから始まる戦闘は何度もやり直して活路を見出す事が要求されるので、倒す頃には長年戦ってきた好敵手のような印象を持っています。こういう表現があるのかと目からウロコでしたが、『今まで倒してきた組織のトップ』や『仲間の死によって覚醒した上司』など、敵が肩書を持つようになってくるとMili歌唱のキャラソンが流れるからたまりません。

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終盤、どうしたってこうなるだろうという展開が来るんですが、「この都市では、何かに割り切って生きていくしかない」という今まで何度も何度も語られて主人公やヒロイン、そしてプレイヤーがわかりきっている戦闘が始まってしまうというのが何事にも耐えがたい美しさを演出していてとてもよかったです。
シャオやアルガリアの生き様をこれでもかと見せつけられ、割り切れなかった人間たちがどうなってきたのかを見たとしても、割り切れない事もある。というのが最高にアツい。ここまで散々世の中の理から外れたオカルトのような敵を相手してきたのに、急に男の子が好きなハンバーグ、オムライスになるの好みすぎる。

韓国語のフルボイスなんですけどSEとか非常に凝った作りになっていて職業柄かなり唸らされました。

一番好きだった敵のミョさんです
この後死にます

戦闘

序盤こそソシャゲみたいな単調な戦闘だなと思いましたが、終わってみればこれほど表現に長けた戦闘はありませんでした。というよりも、「この戦闘、ストーリーを表現するためにはどういった仕様が必要か」というところから逆算されて作られたようにも見えます。

1キャラにつきたった9枚のデッキを構築して戦います。TCGやったことある方ならわかると思いますが、薄いデッキほどやりたいことはやりやすくなるので、コンセプトやロマンデッキはかなり強いです。

終盤はこういう「デッキ9枚がそれぞれ違うカードで構成されている場合、カードを1枚引いてマナを2回復する攻撃カード」といったバカパワーカードがバカスカ使えるようになるんですけど、それを上回る筋力で敵も襲い掛かってきます。
総じて難易度は高めです。


特に前作やスピンオフ作品を巻き込んだファンサである幻想体バトルは素晴らしいです。まったく異なったゲーム性で苦しめられたバカ共が、特徴を保ったままカードバトルで襲い掛かってくる興奮。それが何度も何度も訪れる脳内麻薬ドバドバのゲームでした。あえて1つに絞るなら、自然科学の回の終盤が一番好きで、デカい声が出てしまうほどの演出でした。あそこで盛り上がらない男の子は存在しません。
-あれだけ前作で苦しめられた憎しみの魔法少女が、最後の最後に正義を貫くクソデカビームを打つの激熱すぎるでしょ-


例えばこいつは前作に出てくる中でもバカ寄りの問題児、『歌う機械』です。
自制心の低いキャラを即死させる効果と、勇気の"高い"キャラを即死させる効果を持っていて、ステータスが高ければ高いほど良いみたいな一般的なゲームの常識が通用しないロボトミーコーポレーションを象徴するオバケなんですが、この特徴をうまいことカードバトルに落とし込んでいるのがRuinaの凄いところです。
相手は自制心を下げる効果のカードを使用し、それをガードすることが出来ないと、真ん中にいる機会に食べられてしまいますが、それを防ぐことによって敵を食べさせ、逆に相手を倒す事が出来るというギミックになっています。
相手の行動はある程度予測可能になっていて、この場合3ターンに一度このギミックが発動するので、デッキはガードすることができるカードで固めて、猶予期間中にガードカードを引くようにデッキを回す事が要求されるわけです。

このように、このゲームは『敵のギミックを理解する』→『勝てるデッキを限られたカードプールから構築する』→『戦闘中の立ち回りを考える』という流れになっており、全ての戦闘がボス戦のような歯ごたえのあるものとなっています。序盤のチュートリアルこそ適当にデッキ組んで殴ってれば勝てるようなものとなっていますが、すぐに退屈さは薄れ、脳をフル回転させる楽しさを味わう事が出来ました。
難しいゲームですが、『異形の化け物を管理する』という緊張感を演出するためには不可欠なものでしょう。高難易度なことも、演出の一つだと解釈しました。

まとめ

このゲームの致命的な欠点というかハードルの高さは、とにかく100時間越えのLobotomy Corporationを遊んでいないと話が理解できない。というところにあります。

しかし、それを補って余りある薄まらない面白さがあると断言できる作品でした。

間違いなく人生で5指に入るゲームだと思います。

がんばれそうな人は頑張ってください…