面白いバディ物、超探偵事件簿 レインコード 感想

ミステリとしても新章ダンガンロンパとしても求めていたものとはかけ離れていて微妙だったけど、全く期待していないバディ物としての面白さがあったのでかなり満足しました。

以下内容に触れます。

 

ミステリ、新章ダンガンロンパとして

僕がミステリに求めるもの、それは頭がバグるようなトリックと予想を裏切るオチ。

ダンガンロンパでは本当に最小限の情報を与えられて、議論とともにそれが徐々に明らかになっていくという構造が良くできていて、(逆転裁判のアレンジといえど)とても好きなゲームだった。特にスーパーダンガンロンパ2の5章は、ゲーム史に残る名作中の名作シナリオだと思っている。

アニメの失敗とV3最終章のクソみたいなオチでダンガンロンパからは心が離れていたが、やはりレインコードにはこの辺を期待していたし、あの悪趣味で外連味に溢れた世界を楽しみにしていた。

ただ、ダンガンロンパでは「超高校級」という容疑者も推理する側も共に持っていた能力モノとしての特異さを捨てて、レインコードでは推理側のみが能力を持っているので、密室やトリックも無難で想像の付きやすいものになってしまっている。ある種男らしいともいえるアドバンテージの捨て方は好みだが、捨てた分何か得ているかと言われるとかなり微妙だと感じる。

推理材料である解鍵が出そろった時点で、ある程度推理できてしまう程度のトリックしか無いので、謎迷宮中はその答え合わせを丁寧に行うだけになってしまっていた。明らかに足を引っ張っているSwitchの長いロード時間も含めて、当初期待していたものが得られたかと言われると答えはNoとなる。特に、3章のやる気のないトリックはいくらフブキの活躍シーンを作るためとはいえもう少しなんとかしてほしい。3章は無いほうがいいまである。

しかし、それはそれ。いくら難易度が低いとはいえ、自分で建てたロジックを丁寧に積み上げていくような謎迷宮の体験が面白くなかったといえば嘘になる。これはこれでミステリの初心に帰ったような面白さであったし、これを10代の頃に遊べていたら他の面白いミステリも積極的に摂取しようと思えただろう。入門編としてかなり良いのではないだろうか。

マリオ簡単すぎておじさん楽しめない問題みたいなのは、おじさんの問題であってゲームの問題ではないのである。多少丁寧すぎる気もするが、4章の大がかりなトリックや5章の丁寧に組み上げられた大仕掛けには驚かされた。

ロードやミニゲームのテンポも含めて、重箱の隅をつつこうとすればいくらでもつけそうな気はするのだが、手順に関しては丁寧に作られているので、アドベンチャーゲームを遊んだことがない人にこそプレイしてほしいタイトルになっていたと思う。

バディ物として

本当に予想もしていなかったが、主人公と共に活躍する死に神ちゃんがとんでもない存在で、これだけでこのゲームの価値は十分にあると声を大にして言いたい。

謎迷宮の可愛い高身長お姉さんは、何もわからない視聴者目線で質問を投げかける役として大いに貢献していたし、「でもそれだと、アレと矛盾しない?」と、プレイヤーがツッコミを入れたくなるシーンで、即座に死に神ちゃんがツッコんでくれるテンポの良さがとても心地良かった。死に神ちゃんはいつでもプレイヤーの目線であり、丁寧すぎるミステリパートの緩衝材にもなってくれている。恐ろしい万能キャラクターだ。

そして、なんといっても“ふわふわ”形態の死に神ちゃんの働きが本当に素晴らしい。

退屈になりがちな証拠を集めるパートでは、モノクマのような軽口を叩いたり、フィールドにある小物を使ってモノボケをし始めたり……陰鬱になりがちな殺人事件を扱いながら、どこか柔らかな雰囲気にすることに常に成功していてとても楽しかった。

ちょっと性格が悪くて嫉妬しがちで主人公思いのかわいい死神ちゃんは今年遊んだゲームでは一番好きなキャラクターかもしれない。5章のギミック並に、死に神ちゃんと共に過ごした時間について非常に丁寧に練られていて、最終盤はまんまと泣かされてしまった。すげえくだらないシナリオでもいいので、二人の時間が無限に続くコンテンツを出し続けてほしい……5分のミニアニメとかでもよいので……

かわいらしい3Dモデルしかり、カットシーンの所作しかり、グラフィックの作りこみはただただスパチュンCG班の素晴らしい仕事に驚くばかりであった。AIソムニ略でも感じていたが、スパチュンは今や日本一カットシーンを作るのが上手な会社なのではないだろうか。

スパチュンはもちろんのこと、V3プレイ後は嫌いなゲームクリエイターランキングの上位に居座り続けた小高和剛先生も、ダンガンロンパに囚われずに高級なアドベンチャーゲームとして面白いものを作り上げた事にただただ拍手したいと思う。素晴らしい作品でした。