The Last of Us Part II 感想(ネタバレあり)

辛く苦しい体験だった。

 【まとめ】

・娯楽作品ではない。つらい場面ばかり。

・前作が好きだった人は是非最後までプレイしてほしいゲーム。

・演出や美術は最高。ただしそれが楽しい方向性であるとは限らない。

・大ボリュームで最後までスキのない作りこみではあるが、ボリュームが多く、冗長と感じるかも。

 

前作ラスアスの何が好きだったか
体験の濃密さ、今までにないストーリー、作りこまれた世界観と演出による没入感、エリーの愛らしさ。全てが濃厚で、それでいて簡潔だったと記憶している。
そしてオチで主人公は全ての人類を裏切りエリー一人を選ぶ。

続編のこのゲームに人々は何を求めていたか。
エリーとの甘々なサバイバル?新たな解決方法?
ジョエルが死なないこれらの展開であったなら、自分は間違いなく楽しめていなかったと思う。また、それがゲーム序盤では無く終盤、エリーを守って死ぬ形であっても今作の展開以上の物語は作れてなかったと思う。
利己的な判断をしたジョエルは罰を受けなければならない。それは前作が好きだった人であれば感じざるを得ない事であり、ゲーム序盤で考えうる限り最悪の形で実現する。

ユーザが求めていた成長したエリーとジョエルのコミュニケーションは、ゲームを進めると少しずつ追体験させられる。この後最悪な結果が待っていると知ってなお、このカットシーンが嬉しくて仕方なかった。

前作プレイ中、自分は間違いなくジョエルだった。
今作序盤も自分はジョエルであった。

だからこそ、惨殺された後の自分の視点が分からなくなる。エリーに感情移入しようとするが、エリーはジョエルが恐らく望まない形で敵を討とうと突っ走っていく。
ジョエルが死んだところで街に留まっていれば…アビーに見逃された後にディーナと子供と暮らしていれば…ジョエル=自分が望まない敵討ちを望むがあまり、エリーは全てを失っていく。

特にラストバトルは最悪だった。プレイヤーの意思とエリーの意思が完全に剥離しており、ナイフを振りたくない、連打(QTE)したくない。文字通り過去最悪のゲームであった。

ここまで感情を揺さぶられる時点で、このゲームが駄作だという意見には賛同できない。陳腐で安っぽい鬱描写のゲームは、嘲笑はしても感情は揺れ動かないと思っている。

 

前述したとおりこのゲームはプレイヤーが痛みを伴うゲーム体験であり、世間が暗い雰囲気の中に摂取したいタイプの娯楽でないことはわかっているつもりだ。それでもなお、先に進みたくなる丁寧な演出と描写があった。
どれだけ金をかければここまでのビジュアルが作れるのか想像もつかないが、少なくともかけるところに金をかけた作品であることは保証する。

ラストバトル前の回想がミスリードであり、最悪のラストがあり、エンディングで若干救われる手法は見事だと思う。ラストバトルの決着のつけ方も良かった。ストーリーや演出に関しては、それを望む望まないを問わずに100点満点のゲームだと自分は思う。

このゲーム、「正義の反対は別の正義」という内容ではあるが主軸では無いし、「復讐は何も生まない」という内容もではあるがこれも主軸では無い。
最終段階でファイアフライでもウルフでもセラファイトでもない新しい勢力が登場して、そういったテーマ性のある物語についてのアンチテーゼだったのかなと感じた。善意だけではどうにもならない事で世界は回っていて個々人や集団の力ではどうしようもない無力感を表現するためのストーリーや美術だったんじゃないかなと。

 

プレイ時間にして40時間弱、冗長とも言えるこの長さが感情を揺さぶるバランスとしては最適だったのだと思うが、暗いところで迷路のようなマップが多く、敵を全て掃討してなお行き先がわからない所も多かった。かなり目が疲れるため、3D酔いがひどく、1日2時間~3時間程度のプレイを繰り返してやっとクリアした。

最初の10時間~20時間程度はステルスアクションとして非常に面白く、新たな武器やスキルがすぐに開放されるため爽快感があったが、場面転換があったあたりから目新しい場面が少なくなるため、プレイが雑になった。
敵は硬く無いが、プレイヤーが柔らかいため必然的にリトライが多くなり、うんざりする場面も多かった。

 

蛇足だが嫌でも入り込んでくるこのゲームへの酷評ネタバレについて。
LGBT要素があるだとか、アビー主観視点が気に食わないだとか、一つの場面だけ切り取ってこのゲームを批判する人が多くがっかりしていたが、最後までプレイして本当に良かった。そういった浅い意見を気にしていちいち憤るよりも、実際に自分でプレイしてみないとわからない所が多くあるというのを思い直した体験だった。