本当にこんな話なん?神群像ミュージカル作品、『実写版リトルマーメイド』感想

原作はキングダムハーツで履修済みなのでだいたい知っています。

もうとにかく面白い映画でした。画面と歌と踊りは文句なし。ただ、終盤の脚本が力業すぎてここは賛否ありそうですが、一緒に見に行ったディズニー大好きな妹曰く、「概ね原作通り」だったとのことで驚きました。でも嫌じゃなくて、逆にパワー系すぎて声出して笑いそうになったのでかなりアリ寄りです。バーフバリじゃねえんだからさ。

そこまで原作に思い入れ無いのでアリエルが黒人になっても別にって感じなのはフェアじゃない感じしますが、ダイビング好きなんで「サンゴ礁の下の暗い海に差し込む陽の光の美しさ」みたいな海の表現は見たかったものそのままお出しされたし、だれでも一度は聞いたことのあるミュージカルパートはアニメ版のアレンジになっているのですが、想像していた何倍も楽しく素敵だったので大満足。アンダーザシーが美しく圧巻であればこの映画は成功でしょ。というわけでかなりオススメ寄り。脚本だけでなく、ミュージカルパート以外のCGはかなり安っぽかったりするので、何があっても怒らない自信がある人であればかなり楽しめるかと思います。

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以下ネタバレです。

大人の事情

美女じゃないと成立しないお話でこの俳優さんはどうなんだろうみたいなのは流石に僕でも感じていますが、アリエル以外の俳優さんはここぞとばかりに美男美女ばかりで、主人公を生贄にすることでそれら全て丸く収まるなら力業だけど一番楽だったんじゃないかと、少しディズニーの苦労も伝わってくるような大人の事情をひしひしと感じました。その時点で原作リスペクト無さすぎでしょと怒っているファンの皆さんの気持ちもわかります。でもそんな感じでした。まあ演技や歌は本当に上手なので…

原作本当にこんな話なん?

ガキの頃妹が見ていたビデオを流し見していただけの知識しかないので、あらすじすらかなり怪しいです。5歳の俺はリトルマーメイドは女子供が見るものだと思っていたレイシストだったので、ちゃんと作品に向き合うことが出来ませんでしたが、「本当に原作通りなの?」と言いたくなるような終盤の展開は必見。パワーは全てを解決する。

キングダムハーツとかなりごっちゃになってそうですが、ざっくりした自分の理解は以下の通りで、概ねこれはあっていました。

人間にあこがれる人魚の少女アリエルは、偶然助けた王子に恋をし、悪い魔女にそそのかされて声を対価に人間の姿を手に入れる。契約は「3日以内に王子とセックスしないと声のみならず全てを魔女に捧げる」というもの。

海の友達の力を借りつつ王子様といい感じになるも、なんやかんや(①)あって時間切れになり、アリエルは人質になる。

トリトン王はアリエルを救うために魔女の目論見であった大海すべてを制圧する槍トライデントを渡し、魔女はトリトン王を殺す。王子の助けもありなんやかんや(②)あって魔女を撃破したアリエルは、トライデントの力で人間になり、王子と結婚し幸せなキスをしましたとさ。おしまい。

特に①の「どうしてセックス(これは実写版ではキスで良いという形で難易度が調整されていました)できなかったのか」という部分と、②の「すげえ強い槍を手に入れた悪の親玉を、人魚と人間1人がどうやって倒したのか」という部分は完全に記憶から抜け落ちていて普通に気になっていましたが、これがかなり力技だったので劇場で笑いをこらえるのがかなり大変でした。

①の答えは「魔女が普通に妨害してくる」です。

「果たしてお前は声がなくとも3日で男落とせるほど魅力的な女かな?」みたいな制約と誓約みたいな話してたのに「邪魔しないとは言ってない」なんて賭郎勝負みたいな事に急になるのは嬉しいサプライズ。

しかもその妨害の仕方が、最初はアリエルから奪った声使って戦うのかと思ったら「魅了して自分の物にする魔法」とかいうチート以外のなんでもない雑魔法で冷たく行くの最高すぎる。ありありルールでもそれは無しだろ。

負けじとアリエルも、魔女が首につけている声が封じられていたペンダントをねじり獲って破壊し、声を取り戻すシーンは凄すぎて声が出そうになりました。なんでもありならこっちにも考えがあるってこと?すげえなマジで

ただし、声を取り戻すことで王子が真相を知る事はできましたが、キスの前に時間切れ。アリエルはあえなく契約不履行でドナドナされてしまいます。なるほど~こういう力業だったから覚えてなかったんだな?

②はもっと凄くて、正直なんで勝てたのかわかりませんでした

槍によって巨大化した魔女は津波を起こして王子とアリエルを殺そうとしますが、油断した隙をついて難破船の先端でつついて攻撃。魔女は一撃で死亡します。なんで?激ローだった?

なんかすげえ槍を手に入れてあんなにデカくなったのにケツのあたりをつつかれたくらいで勝てるなら苦労しなくないですか?あれ降ってきたらGOD揃うくらい凄い槍なのに?

もうここは流石に納得できなくて帰ってきてアニメ版を見たんですが、アニメ版は「難破船の攻撃によってトライデントの力を制御できなくなり、難破船にとりつくタコのように深海へ沈んでいく」というめちゃくちゃかっこいい理由付けがされていてかなり納得しました。あれ~実写版もこんな感じだったのかな…なんか本当になんで死んだ?としか思えなかったんだけど…

その後「王子か槍か迷った末に槍を選択するアリエル」とか「槍が海中に刺さると死んだはずのトリトン王がダンブルドアの霊みたいに復活する」とか…なんで?というシーンは多岐に渡りましたが、即死したアースラが面白すぎて些細な事でした。

ガバるまでは「世間知らずの夢見るヒロイン」、「ヒロインを思うがあまりやりすぎてしまう父トリトン王」、「トリトン王に恨みがありトライデント奪還を目論む魔女アースラ」、「アリエルをサポートするセバスチャン達」、「アリエルを探す王子」。それぞれがバラバラに目論見があり、歯車がかみ合うように物語が進行していく群像劇のような本当に感心させられるシナリオで、人魚姫という原作がありつつもそれを上手にアレンジしているディズニーの凄さを感じていただけに、急にガバり始めるのはちょっと残念ではありましたが、妹曰くほぼ原作(アニメ版)通りとのことなので仕方ないのでしょう。本当か?

契約を果たせずアースラに海深く連れ去られるシーンで、「王子にもらった服が岩肌でちぎれて手が届かなくなる」事で離れていく王子との距離を描写するなど、とにかく絵作りが上手だったので、なんか大筋のシナリオが雑なのはかなり浮いていましたが…まあ歌とダンスが抜群に良かったので本当に映画館で見て良かったと思いました。

特に海の魔女はマツコデラックスみたいな見た目でめちゃくちゃ凄みがある俳優さん(海外の芸人さんらしい)で、魔女自信も「昔トリトン王と揉めて追放された」くらいは説明されるけど細かいところは描写が無く、なんか謎に仲間想いなところとか見た目やミステリアスな設定など、どこをとっても魅力たっぷりでとても良かったです。

家族で行ったので翻訳版を見ましたが、近いうちに字幕原語版でもう一度見たいと思います。

脚本の粗が気にならないくらい楽しい映画でした。