昔沖縄旅行に行ったときに4日連続で行った沖縄そば屋の話

 

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昔といっても10年には満たないくらい前の話。

当時は格ゲー(主にブレイブルーというゲーム)のコミュニティに属していて、その中でも気の合う連中と予定を合わせて沖縄旅行に行った。

社会人2年目かそこらでパチスロにハマり倒し全然金は無かったが、東京から沖縄は往復2万もあればいけるし、なけなしの有休とクレジットカードの残高を全ぶっぱして南の島へなだれ込んだのだ。

もうとにかく楽しかった。沖縄にも格ゲーコミュニティはあったし、何よりとても強かった。せっかく沖縄に来たのに隣にタコライス屋のある小さいゲーセンで閉店まで格ゲーに明け暮れ、次の日は安いレンタカーを借りて美ら海水族館まで走り、デカい水槽にはしゃいで、デカいタコスを食べたのは遠い昔だがかろうじて覚えている。 

 

海を見たり、海中道路でつながっている小島を散策したり、渋滞につかまってる中でも小汚い話で盛り上がったり、とにかく楽しかったのだが、その中でも一番良かった体験というのがタイトルの沖縄そば屋だ。

もうとにかく(少なくとも俺は)金が無かったので、宿は2段ベッドのドミトリーだったのだが、国際通り付近のそのドミトリーから歩いて数分のところに、夜中の2時くらいまで空いている沖縄そば屋があった。

確か現地の格ゲーマーに「この店おいしいよ」と教えてもらったのがきっかけだったと思ったが、行ってみると「店」というよりは「屋台」のような店構えの店だった。

そしてとにかく安い。300円か400円とかでデカい三枚肉の乗った沖縄そばが出てくる。特段特徴のある美味しさではなかったが、出汁が効いたまさに「沖縄そば」に求めていた味で、夜中の小腹が減った時間帯にはたまらない味だった。 

到着日の夜にそこを知ってしまった俺たちの中で寝る前に必ずそこに行くことがルールになった。金はなかったがウマいもんは食いたかったので、蒸し豚やステーキなどの名物を毎晩予約して腹いっぱい食べていたがそんなことは関係ない。沖縄そばはホテルで寝る前に絶対に行く。それがルールだから。

十代の友達も同行していたので食欲に歯止めなんてものは無く、平気で2杯くらい食べたし、50円というウソみたいな価格でついてくる沖縄風混ぜご飯の「じゅーしー」も必ず頼んだ。

レンタカーをぶつけた(3万円とられた)こと以外は全てが楽しく、当時社会に揉まれてかなり精神的にまいってしまっていた自分を大いに救ってくれる旅行だったと今でも思う。

 

そのあたりから毎年かかさず沖縄旅行に行っているのだが、不思議とその思い出の店にはいくタイミングがなかった。

泊まるホテルが遠かったり、その次の年はダイビングくらいしかすることのない離島に宿泊したり、そもそも本島ではないところに遊びに行ったり。「無理やり時間作ってでも行くべきだったかもな」と毎回帰ってから後悔していた。

今年は(ありがたいことに)少し仕事が忙しいので行けるかはわからないが、隙を見て旅行の行きたい場所をピックアップしている。

そして、今年こそはこの沖縄そば屋に予定を組んででも行こうと思っていた。

しかし、グーグルマップを駆使して頑張って探したのだが、見つからない。

国際通り沿いのドミトリーに宿泊したのでその周辺なのは間違いないのだが、沖縄そばで検索してもピンが立たないのだ。一応記憶違いや、何かと混ざっている可能性を考えて、那覇のみならず泊ったことのある場所周辺の沖縄そば屋を入念に探したがどうしても見つからない。外観は屋台のようなカウンターに椅子が置いてあるスタイルで間違いなかったと思うのだが……

そこで一つの嫌な予感があり、「安い 沖縄そば 国際通り 閉店」でググると残念なことに簡単にヒットしてしまった。 

 

こちらのブログでは外観も含めて写真がいくつか乗っている。

yakitan.info

ああ、これだ。
いつ探しても見つからず、ドミトリーのベットが固すぎてみた良い夢だったんじゃないかと思ったこともあったが、都市の再開発のあおりで閉店してしまったらしい。

暑い沖縄の夜を友人とダラダラと歩いていると、夜中にこのお店だけがぼんやりと明るく輝いている。まるで誘蛾灯のようなそれに誘われるかのように足並みは早くなった。

古い券売機で400円の券を購入しカウンターに出すと、笑顔のおじいが数分でなみなみとスープが入った沖縄そばをドカンと置き、それを無言でスープまで飲み干す。

霞がかった楽しい思い出が一気にフラッシュバックすると同時に、この店には二度と行けないという寂しさも感じる。

この沖縄そばをもう一度食べたかったのは間違いないが、皆で歩いてここに行ってバカみたいな話をしながら沖縄の夜を歩くあの体験がセットでないと満足できなかったような気もするので、これでよかった気もする。

しかしもう一度食べたかったな。2016年に閉店となると、再訪できなかったというより俺たちがギリギリ滑り込んで食べることが出来ただけなのかもしれないので、ラッキーだったと思うことにしよう。

やはり沖縄は不思議な出会いと別れに満ち溢れた楽しいところだなと思う。